・・・といったようなことをしたり顔に云って他人の真面目なそうして実際はかなり有望な独創的研究をあたまからけなしつけるようないわゆる大家も決して珍しくはない。「それは君、昔フランスでやったものだよ」と云って若い技師の進言を言下に退ける局長もまた珍し・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・しかし父がいろいろの理由から工科をやることを主張したので、そのころ前途有望とされていた造船学をやることになり、自分もそのつもりになって高等学校へはいった。ネーヴァル・アンニュアルなどを取り寄せていろいろな軍艦の型を覚えたり、水雷艇や魚形水雷・・・ 寺田寅彦 「田丸先生の追憶」
・・・ 以上に述べたとは少しく異なった殖産事業の方面においても、将来非常に有望な物理学応用の新区域があるように思われる。先ず農業の方面ではつとに農芸物理学という学科が出来ているくらいであるが、今後まだどれだけ発展するか予期し難いように見える。・・・ 寺田寅彦 「物理学の応用について」
・・・兄の話では、今の仕事が大望のある青年としてはそう有望のものではけっしてないのだとのことであった。で、私がこのごろ二十五六年ぶりで大阪で逢った同窓で、ある大きなロシヤ貿易の商会主であるY氏に、一度桂三郎を紹介してくれろというのが、兄の希望であ・・・ 徳田秋声 「蒼白い月」
・・・お前は前途有望だから、残って部下の訓練に精を出してくれなくちゃ困ると、まあ然ういう命令なんだ。 秋山大尉は残念でならねえ。○○師団のところへ掛合行きも行った。五度も行って縋った。○○師団長も終に怒った。軍隊の命令は、総て、天皇陛下のお言・・・ 徳田秋声 「躯」
・・・ 革命以来、各工場、クラブ内の文学研究会は共産党青年の中から多く有望な作家を送り出した。その点大きい役割を果しつつあるが一方、段々、所謂文学趣味に堕す傾向があった。 文学研究会へ出て来る青年たちは、むろん職場の連中だ。彼等は職場にい・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・文学に於ける有望な新しい作家が勤労大衆の中から出て来るようには若い画家が出て来ないが、それでも展覧会などを見ると内容的にコレチャロフなどが逆立ちしたって捕えられないものをつかまえている。将来興味ある発達の芽がある。知られている通りソヴェト同・・・ 宮本百合子 「ソヴェト「劇場労働青年」」
・・・産主義時代に若い党員が恋愛の自由ということを感違いしていろいろの誤謬を起したことにレーニンが非常に心配して、今の若いものは恋愛というものは一つの生理的問題に過ぎないということを非常に誤解して、あんなに有望な青年達が娘のスカートを追っかけて行・・・ 宮本百合子 「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」
・・・共産党青年で有望な若い人がたくさんにその辺からも出ている。現在、最も活動している作家の一人にファデーエフなどあるが、彼は共産党員でプロレタリア作家連盟の指導者である。〔一九三〇年十一月〕・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの現状勢と芸術」
・・・主義時代に若い党員が恋愛の自由ということを感違いして、いろいろの誤謬を起したことにレーニンが非常に心配して、今の若いものは恋愛というものは一つの生理的問題に過ぎないということを非常に誤解して、あんなに有望な青年達が娘のスカートを追っかけてゆ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
出典:青空文庫