・・・○まだあき地があるそうだから、もう少し書く。松岡の手紙によると、新思潮は新潟県にまじめな読者をかなり持っているそうだ。そうしてその人たちの中には、創作に志している青年も多いそうだ。ひとり新思潮のためのみならず、日本のためにも、そういう人・・・ 芥川竜之介 「校正後に」
・・・その前には、背の高い松岡と背の低い菊池とが、袂を風に翻しながら、並んで立っている。そうして、これも帽子をふっている。時々、久米が、大きな声を出して、「成瀬」と呼ぶ。ジョオンズが、口笛をふく。君の弟が、ステッキをふりまわして「兄さん万歳」を連・・・ 芥川竜之介 「出帆」
・・・ 外へ出ると、松岡が「よく見て来たか」と言う。僕は、「うん」と答えながら、うそをついたような気がして、不快だった。 青山の斎場へ行ったら、靄がまったく晴れて、葉のない桜のこずえにもう朝日がさしていた。下から見ると、その桜の枝が、・・・ 芥川竜之介 「葬儀記」
・・・殊に外国からやって来た素見の客に対しては、まるでもう処女の如くはにかみ、顔を真赤にしたという話を聞きました。松岡などに逢ったら、多少でも良心のあるひとなら誰でも、へどもどしますよ。それを当の松岡は(これは譬噺レニンに呆れられているという事に・・・ 太宰治 「返事」
・・・ それから私いま松岡さんのおっしゃったことで、女の人の具体的な感じかたを非常に面白く思ったんですけれども、私にもあのプリントで被告の身許引受人というのがわからないのです。あれにはただ身許引受人があったから執行猶予にしたとあります。身許引・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・にさえならぬ図々しい屁理屈をこねている日本帝国主義の三百代言松岡洋右の提灯もちなどとともに、大衆を犠牲として恐慌を切りぬけようとする支配階級帝国主義戦争強行のチンドン屋の役を相つとめている。「物価暴騰時代。損をしない心得」この記事をよん・・・ 宮本百合子 「『キング』で得をするのは誰か」
・・・ ニューヨークといえば、われわれのクラブの委員長であった松岡洋子さんはこのごろ水飢饉のニューヨークでどんな毎日を送っているだろう。昼夜白熱して夜空にまで広告のテレヴィジョンを映している不眠の都市。ウォール街を中心に渦巻く宣伝の都市ニュー・・・ 宮本百合子 「この三つのことば」
・・・の上に帝国主義的発展をとげた。松岡駒吉氏たちは、宝塚会談で繊維労働者の民主的な生活への見とおしを売りわたして、今日北白川宮邸に住む身となっている。日本経済復興をだしに武器製造から繊維の儲けに移った業者と腹を合わせた社会党の政府が、この課題を・・・ 宮本百合子 「その檻をひらけ」
・・・新聞は松岡洋子を編輯長とした。 櫛田さんは当時クラブの書記長であった。新聞そのものを実質的にクラブの機関紙としてゆくための闘いの時期、当然櫛田さんの心労ははなはだしかった。ちっとも金をもたない婦人民主クラブが、ともかくひとつの週刊紙を借・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
出典:青空文庫