・・・ 馬鹿な奴だとは思ったが、僕はもう未練がないと言いたいくらいだから、物好き半分に根問いをして見た。二階にはおやじもいるし、他にまだ二人ばかりいる。跡からあがった女は、浅草公園の待合○○の女将であった。 菊子の口のはたの爛れはすッかり・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・女の話すことだけ聞くのに甘んじないで、根問いをすると、女はそんな目に逢ったことがないので厭がる。そして何の権利があって、そんな事を問うのだか分からないとさえ思う。 とうとう喧嘩をした。ドリスは喧嘩が大嫌いである。喧嘩で、一たび失ったこの・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
出典:青空文庫