・・・彼らは第四階級以外の階級者が発明した論理と、思想と、検察法とをもって、文芸的作品に臨み、労働文芸としからざるものとを選り分ける。私はそうした態度を採ることは断じてできない。 もし階級争闘というものが現代生活の核心をなすものであって、それ・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・ブルジョア階級と擬称せられる集団の中にも、よく検察してみるとブルジョア風のプロレタリアもいれば、プロレタリア風のブルジョアもいるというように、第四階級も決して全部同質なものでないと僕は信ずるのだ。第四階級をいうならば、ブルジョアジーとの私生・・・ 有島武郎 「片信」
・・・いかんとなれば背後はすでにいったんわが眼に検察して、異状なしと認めてこれを放免したるものなればなり。 兇徒あり、白刃を揮いて背後より渠を刺さんか、巡査はその呼吸の根の留まらんまでは、背後に人あるということに、思いいたることはなかるべし。・・・ 泉鏡花 「夜行巡査」
・・・この事件が起訴されるまでの全過程を通じて、検察団はどのように行為したか。そして、これからどのように行動して法律をつかうかという点が十分監視されなければならないということである。どういう結果であれ、人々は真実の事実を知りたいと思っているのだ。・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・が、文学作品としてよむことの出来ない年齢の読者や教養の低い人々にとって、のぞましくない影響をもつからと言って、部分的に削除したりしている、という実例は、こんにちの日本の検察力で、起訴してよいという口実にはなりません。四、真に文化上の処置・・・ 宮本百合子 「「チャタレー夫人の恋人」の起訴につよく抗議する」
・・・の告発状の中には、検察当局がその作品をちゃんとよんでいない節があることを公表するだろう。ヒダにはさまれてもがくどの虫も、権力によって発せられた告発状そのものが、訴訟法に反してつくられているという事実をもって、法廷にたたかう決意を示したためし・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・この列車妨害記事の出はじめたとき、全国の国鉄労組のまじめな人たちは、すぐ自身たちで検察隊をつくるべきだと思った。こういう挑発は労働者自身によってきびしく監視されるべきことがらである。 列車妨害という行為は本質的に反労働者的であり、反人民・・・ 宮本百合子 「犯人」
・・・この事実は世界の精神潮流から非常に遅れていた最近のわが国の文化についても、厳密に検察せられなくてはならない。―― そこで生活の「真実」、人間の「自然」の問題である。我々はこの「真実」、「自然」を描くと自称する多くの作家を持っている。しか・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
出典:青空文庫