・・・戦場が拡大されたということは、現代の戦争が決して軍隊と軍隊との間に行われる武力闘争ではなくなったことを示した。明治以来、満州や中国へいくたびも侵入して、さまざまの残虐行為を行いながら、海をわたって日本へかえってくれば、あの土地で行った悪虐ぶ・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・なんかのようにどういう風にして労働する人の生活が武力によって監視されているかということを書いてある、それを何と思って読んだでしょう。それから去年の十月に治安維持法が撤廃され、みなさんもラジオなどで、今までの警察力、日本の恐ろしい野蛮な警察力・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・貴族は武力を統帥し、僧侶は貴族階級のイデオローグとして最高の文化活動を担任していた。だからラテン語で書かれたその頃の文学は、どんな馬子によっても書かれなかった。ただ僧侶のものだった。当時は文盲の王があり貴族があった。 日本の現在までの婦・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・しかし、その中国人、正しくは中国のプロレタリアート・農民に対して、筆者をこめての武力的侵害者の一団が、どういう関係にあるかということは、一言もふれられていない。そこまで問題を切りこむ作家の人間的省察も階級的責任感もない。 それどころか、・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・それは武力的な闘争の賭物とされたばかりでなく、道徳的な闘争の賭物ともされたのであった。騎士物語の中には、夫である一人の騎士が、友達との張合いから、妻の貞操を賭物として、破廉恥な友人の道徳的なテストに可憐な妻をさらす物語が少くない。中世の女性・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・わからないが、山とつまれている未解決の社会問題を燃きつけにして怪火を出して、一般の人々が判断を迷わされているすきに、だから武装警察力を増大しなければならない、これだから、日本の平和のためにはより強大な武力の保護がいる、と軍事同盟へひっぱりこ・・・ 宮本百合子 「わたしたちには選ぶ権利がある」
・・・ 新興武士階級も武力をもって権力を握ろうとする点において旧来の武士階級と異なったものではないが、しかし応仁以前の伝統的な武家とは一つの点においてはっきりと違うのである。それは旧来の武家が伝統の上に立っていたのに対して、新しい武家が実力の・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫