・・・では比較的むだな饒舌が少ないようであるが、ひとり旅に出た子供のあとを追い駆ける男が、途中で子供の歩幅とおとなのそれとの比較をして、その目の子勘定の結果から自分の行き過ぎに気がついて引き返すという場面がある。「子供の足でこれだけ、おとなの足で・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・人として、自分の生活内容をあらゆる方面に伸展させて行こうとする願望と一緒に、同じ心の中から、この歩幅を縮めさせ、左顧右眄させて、終に或る処まで、見越をつけさせて仕舞うような何かの動機があるのである。 四 今・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・この三つの創作方法は、日本の民主革命の広い凹凸の多い戦線にとって、それぞれの階級の進みゆく歩幅につれて新しい文学を生み出してゆくよすがであろう。桑原武夫が、民主主義文学であるならばそれは社会主義的リアリズムの手法をもつべきものであるとして、・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
出典:青空文庫