・・・その株屋は誰が何と言っても、いや、虎魚などの刺す訣はない、確かにあれは海蛇だと強情を張っていたとか言うことだった。「海蛇なんてほんとうにいるの?」 しかしその問に答えたのはたった一人海水帽をかぶった、背の高いHだった。「海蛇か?・・・ 芥川竜之介 「海のほとり」
・・・ 姉さん、そうすると、その火がよ、大方浪の形だんべい、おらが天窓より高くなったり、船底へ崖が出来るように沈んだり、ぶよぶよと転げやあがって、船脚へついて、海蛇ののたくるようについて来るだ。」「………………」「そして何よ、ア、ホイ・・・ 泉鏡花 「海異記」
・・・ その時向うから銀色の光がパッと射して小さな海蛇がやって来ます。くじらは非常に愕ろいたらしく急いで口を閉めました。 海蛇は不思議そうに二人の頭の上をじっと見て云いました。「あなた方はどうしたのですか。悪いことをなさって天から落と・・・ 宮沢賢治 「双子の星」
出典:青空文庫