・・・して、かくされればかくされるほど、それは人々の生活の奥へもぐり、現実によってその理論の真実をたしかめられつつ思想の底にしみいって生きつづけ、こんにちヨーロッパとアジアにはばひろく流れる人民民主主義への源泉となった。 マルクス=エンゲルス・・・ 宮本百合子 「生きている古典」
・・・それは、日本の婦人ぐらい欧米の男にだまされやすい女性はないという、その現実の源泉と社会的な性質では全く同じもので、日本の女性たちの日常は、どちらかというと男から荒っぽく扱われ生活感情を圧しつけられて暮らしている。男のひとのいい分とすれば、そ・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・山林の自然発火から学んで、めいめいの小舎の炉ばたにまでもちきたされるようになった火というもの、文明の源泉を人間が掌握したおどろきとよろこびを、プロメシウスの物語は力づよく語っている。 私たちの生きている今日という時代には、できあいの智慧・・・ 宮本百合子 「いのちのある智慧」
・・・ひろく知られているところのギリシアの社会は、人類の若々しい文化をはじめて花咲かせ、古典文化のつきない源泉となったが、このギリシアの繁栄と自由とは奴隷使用の上に咲きほこっていた。人口比率は一人の自由人に対して五人ぐらいの奴隷があって、その奴隷・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・その原因は、個性と文学の発展の可能の源泉として、日本の民主主義文学の伝統が、積年の苦難を通してたえず闡明してきた文学における客観的な社会性の意義を、会得していなかったからである。文学において謙虚にまた強固に自己を大衆のなかなるものとして拡大・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・そして、そのような信頼の源泉は、その人が常に自身の動きに対して責任を負っていて、その責任の態度がこの人生に向ってまともなものであるということから来ている点も理解される。 自信も畢竟はそういうものではなかろうか。この複雑多岐で社会の事情万・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・その源泉は、やはりこの伊達の智慧であった。浪費と軽薄の表徴として、それによって、徳川の警戒心をゆるめようとして途方もなく派手な大模様の衣類をつけて登城した伊達に対して、伊達模様という云いかたが出来たのであった。しかし、これらの逆用されている・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・ その場合、その人に対する友情は、自分の語り度い、忘れ得ない愛する者を、倶に愛し、認めてくれる、という点に源泉を持っているのです。 けれども、そういう場合、どうして、その人を透して彼を愛す、彼を愛する余りその人をも混同して愛の亢奮の・・・ 宮本百合子 「偶感一語」
・・・虚栄心は実際多くの大小不幸の源泉となって来ている。女の虚栄心の生む災害とは、金色夜叉のお宮以来、一番大衆の耳に入りやすい結びつきをもって通俗化されているのである。何しろあいつの女房は見栄坊だったからね。そういわれると、何か納得されるものが聞・・・ 宮本百合子 「暮の街」
・・・多難で煩雑な女の生活の現実の間で、祖父の箴言は常にケーテの勇気の源泉となったように思える。 事実、ケーテ・シュミットはケーテ・コルヴィッツとなっても画業は決して棄てなかった。それどころか、良人カールの良心に従った生活態度とその仕事ぶりと・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
出典:青空文庫