・・・ 仏陀 悉達多は王城を忍び出た後六年の間苦行した。六年の間苦行した所以は勿論王城の生活の豪奢を極めていた祟りであろう。その証拠にはナザレの大工の子は、四十日の断食しかしなかったようである。 又 悉達多・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・主人 困ったものだ、黒ん坊の王様に殺されなければ好いが、――三王城の庭。薔薇の花の中に噴水が上っている。始は誰もいない。しばらくの後、マントルを着た王子が出て来る。王子 やはりこのマントルは着たと思うと、たち・・・ 芥川竜之介 「三つの宝」
・・・買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼は、巡邏の警吏に捕縛された。調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。「この短刀で何をするつもりであっ・・・ 太宰治 「走れメロス」
・・・ 蛮人の王城らしい建物が映写される。この建物はきわめて原始的であるが一種の均整の美をもっている。素人目にはわが大学の安田講堂よりもかえって格好がいいように思われる。デテイルがないだけに全体の輪郭だけに意匠が集注されるためかもしれない。・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
出典:青空文庫