・・・それに対して女が遺憾に思う気持と、男が遺憾に思っている気持とを互に知りあい信じあうこと、そして遺憾のない人間の生き方が、一つでも殖える可能のある社会条件を自分たちの一生のうちにつくってゆこうとする協力、人間は歴史的な存在であるから、私たちの・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・日本の近代の歴史には本当に自分の階級の力で封建権力にとりかわった市民社会がなかったということ、第二次大戦でこのように破滅するまでの日本の歴史に、わたしたちみんなが民主的に生きる生き方を知っていなかったということは、この四年の間に、特権階級の・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・同時に日本の大衆が人民的な民主主義の道を歩きはじめて、中国や北朝鮮のひとびとの現実の建設を眼近にみるにつれ、遠い一つの社会主義的実験国のように思われていたソヴェト同盟の生き方が、案外にも日本のわたしたちの日常につらなったものであることが実感・・・ 宮本百合子 「あとがき(『モスクワ印象記』)」
・・・日清戦争の日本に於けるブルジョア文化の一形態であったキリスト教婦人同盟の主宰者として活躍した葉子の母の、権力を愛し、主我的な生き方に対して自然の皮肉な競争者として現われた娘葉子が、少女時代から特殊な環境の中で驚くべき美貌と才気とを発揮させつ・・・ 宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
・・・昔の人が手鍋さげてもといったその感情は、とぼしいなかにも二人が希望のある、そして見通しのある生き方をみとめあって、たすけあって不幸と闘ってゆくその幸福をいみした言葉ではないでしょうか。 若い婦人が戦争の間、あれほど幸福をうちやぶられてく・・・ 宮本百合子 「生きるための恋愛」
・・・選ばれた人は、みんなから選ばれたという責任をよく知って、級の希望に沿うことが出来ないときには、いさぎよく自分から責任を明らかにして、級長を代って貰うという態度こそ、本当の自由な生き方と云えます。そして、もしも、級全体が、或る不満にかかわらず・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・ 梅雄はそれでひねくれてしまうのではなく、反動的な生き方をする人々を凡て軽蔑し、その点で姉である松下夫人をも人間として軽蔑しているのである。 私の次弟は、一九二九年の夏、高校の三年生で自殺をした。そういう経験からも私はこの条に注意を・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・ 芸術の成果と芸術家の日々の生き方の問題が切実にとりあげ直されても無駄ではないのでしょう。文学は常に、文章道の末枝へ墜落する危険を一方に目撃しつつ、一方にそれとたたかい、批判してゆく力を内部的に包含しています。音楽が風や濤声や木々の葉ず・・・ 宮本百合子 「期待と切望」
・・・このカールの生き方は、妻であったケーテの家の伝統とも深い精神上のつながりを持ったものであった。ケーテの父はユリウス・ループといって、ドイツにおける最初の自由宗教の牧師であった。知られているとおり、ウィルヘルム二世はビスマークの扶けをもって、・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・人間の精神、人間の心、生き方の問題です。 そのようにして日本は民法にしても刑法にしても、いろいろの身分の関係にしてもそうですが、アメリカやイギリス、フランスにしろ、民主主義的な経験からすれば日本よりも進んでおります。そこでは民主主義はど・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
出典:青空文庫