・・・興業師のマンネリズムがカッスル・ウォークの真価をみとめないで苦境におかれるという関係の面だけは後で説明しているけれども。 アステアの踊りの感覚からおしはかると、そういうピエロの悲しみが決して分らない男だとは思えない。監督が何か表面の筋に・・・ 宮本百合子 「表現」
・・・労働者農民・働く全人民の解放のためのたたかいを支持し、その困難な建設時代を貫いて男と等しく生産にたずさわり、男と等しく戦線に立ち、ソヴェトの勤労婦人は解放された女の真価というものを、自分とひととに向って確めた。 ソヴェト権力とともに、文・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・と実感をこめて云っている短い言葉の中には、卓抜な人間的・文学的才能にめぐまれつつ民衆の一人として経て来なければならなかったゴーリキイの、すべての時代的な真価と誤りとが率直に含蓄されていると思う。 マクシム・ゴーリキイは「錯雑した歴史の事・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ マリアは、はじめ声楽家になって、自分がこの世に生れて来たということの真価を発揮しようと思い立った。イタリーでその修業をはじめた。けれども、専門家としての練習に声が堪えないことがわかって、この希望は思い切らなければならなかった。もうこの・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・ 人間が自分の真価の片はじでものぞけば第一に得るものは非常な淋しさ、悲しさである。 自分を観てそれを感じ無いならまだ明かな眼の所有者ではない。 けれ共その悲しさ。 その淋しさが更に強い力で我々を生育させ確かな心で自分の進もう・・・ 宮本百合子 「無題(四)」
・・・をせずひっこんでおれといわれ、衣食の苦労もないところから、その内面の苦痛に沈酔した結果、ヨーロッパの真の美を、その伝統のない日本、風土からして異る日本に求めたとしてもそれは無理である、ヨーロッパ文学の真価も、実にきわめて少数のもののみが理解・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・を知り、多少内的生命を有する人にしてなお虚栄に沈湎して哀れむべき境地に身を置く人がある。虚栄は果てなき砂の文字である。「自己」を誤解されまじとするは恕す、「自己」を真価以上に広告し、すべての他人を凌駕し得たりと自負するに至ッては最も醜怪、最・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫