・・・を筆頭として諸家の随筆が売り出されたが、これは寧ろ当時の文学の衰弱的徴候として後代は着目する性質のものなのである。 三 以上のような諸現象が、一部の作家の間に文学の危期としての警戒を呼び醒したのは極めて当然・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・と創作の業績を重ねながら、目前の日本文学一般がおくれていることへの不満のはけくちを、日清戦争後の日本がさらにシベリアへ着目していた当時の国士的な慷慨のなかに見出した。そして、朝日新聞社からロシア視察旅行に赴き、あちらで発病して、明治四十二年・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・ ここが、じつに着目されなくてはならないところです。世界観と実感と二つを対立させて、モティーヴの切実さが世界観などからは出ない、という論議もあったりしているとき、文学の現実で、この「町工場」なんかは、もうその問題をある意味でとび越えた、・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・などの作風によって親しみやすく思われている永井荷風に着目することとなった。 一方『近代文学』『黄蜂』などは、『新日本文学』とはちがった角度から、新しい文学の誕生のために努力した。『新日本文学』は小沢清「町工場」つづいて熱田五郎「さむい窓・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・方向、テンポが、かならずしもそのひとたちを十分指導しきらない点をもっていて、このさけ目が敵の謀略に乗ぜられたという点、三鷹事件も、松川事件もこの点では共通の動機をもっていたようだし、この点が同時に敵に着目され、全く組織的にちょう発を準備され・・・ 宮本百合子 「ふたつの教訓」
・・・それを米川氏が着目して、ルポルタージュとして上々のものという評価から紹介されたものである。 二百六十頁に満たないこの本は、実に面白い。読み終るのが惜しいと思いながらも一気に読めてしまう。そういう魅力の深い本だが、その内容がまた幾つもの文・・・ 宮本百合子 「文学のひろがり」
・・・あすこには、ほんとうに腹から笑う素朴なおかしさと、生地むいだしの人間らしさとがあってシェクスピアという戯曲家の着目と力量とが、全くひととおりのものでないことをうなずかせた。 この職人衆のリアリスティックな場面に対して、二組の恋人たちが、・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
・・・ 今日、職場で自分達の生活を正しく理解し、やがては自分達の心持を表現した文化を自分で生み出してゆきたいと思っている若い婦人達の動きは非常に着目され、楽しい未来を期待させます。文部省は新しい教育をしようとしているかも知れませんが、東京女子・・・ 宮本百合子 「若人の要求」
・・・色の美しさではなく味のよさに着目するとしても、子供には初茸の味と毒茸の味とを直接に弁別するような価値感は存せぬのである。茸の価値を子供に知らしめたのは子供自身の価値感ではなくして、彼がその中に生きている社会であった。すなわち村落の社会、特に・・・ 和辻哲郎 「茸狩り」
出典:青空文庫