・・・ 秋季美術展覧会が始まって私も見に行った。そして沢山の絵を見ているうちにまた同様な疑いが起った。 それからそれへと考えて行くと、日本国中到る処にこの妙なイズムが転がっているような気がして来た。 最も意外に感じた事は自分が比較的に・・・ 寺田寅彦 「鸚鵡のイズム」
・・・でも西洋で秋季に吹く風とは気象学的にもちがう。その上に「てには」というものは翻訳できないものである。しかし外人の俳句観にもたしかに参考になることはある。翻訳と原句と比べてみることによって、始めて俳句というものの本質がわかるような気がするので・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・もちろん定座には必ず同季の句が別に二句以上結合して三協和音のごとき一群をなすのであって、結局は春秋季題の插入位置を規定する、その代表者として花と月とが選ばれているとも言われる。そうしてこの二つのものが他の季題に比べて最も広い連想範囲をもちう・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
出典:青空文庫