・・・その夜学というのが当時盛んであった政社の一つであったので、時々そういう社の示威運動のようなものが行なわれ、おおぜいで提灯をつけて夜の町を駆けまわり、また時々は南磧で繩奪い旗奪いの競技が行なわれた。ある時はある社の若者が申し合わせて一同頭をク・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・北氷洋に中央アジアに、また太平洋に成層圏に科学的触手を延ばして一方では世界人類の福利のために貢献すると同時に、他方ではまた他の科学国と対等の力をもって科学的な競技場上に相角逐しなければおそらく一国の存在を確保することは不可能になるであろうと・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・「白熱せる神宮競技」。「白熱せる万国工業会議」。こういうトピックスで逆毛立った高速度ジャズトーキーの世の中に、彼は一八五〇年代の学者の行なった古色蒼然たる実験を、あらゆる新しきものより新しいつもりで繰り返しているのであろう。そうして過去・・・ 寺田寅彦 「野球時代」
・・・ 二十歳代の青年期に蜃気楼のような希望の幻影を追いながら脇目もふらずに芸能の修得に勉めて来た人々の群が、三十前後に実世界の闘技場の埒内へ追い込まれ、そこで銘々のとるべきコースや位置が割り当てられる。競技の進行するに従って自然に優勝者と劣敗・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・棒(長さ四尺ばかりにして先の方やや太く手にて持つ処一尺四方ばかりの荒布にて坐蒲団のごとく拵えたる基三個本基および投者の位置に置くべき鉄板様の物一個ずつ、攫者の後方に張りて球を遮るべき網(高さ一間半、幅競技者十八人審判者一人、幹事一人等なり。・・・ 正岡子規 「ベースボール」
・・・永い眠りから醒まされて、夏の朝夕一しお黒い柱の艶を増すような家の間で、華やかな食慾の競技会がある。稚い恋も行われる。色彩ある生活の背景として、棚の葡萄は大きな美しい葉を房々と縁側近くまで垂らして涼風に揺れた。真夏の夕立の後の虹、これは生活の・・・ 宮本百合子 「毛の指環」
・・・ 地方の女学校に教師をしている友達が、面に恐怖を浮べて、対校競技の時他の教師達がこぞって競争学校の生徒に対する女学生の敵愾心、反感を煽る有様について語ったことをも、現実の問題として思い浮ぶのです。〔一九三三年十一月〕・・・ 宮本百合子 「現実の問題」
・・・が、この作品競技でその事業の具体的な困難さを理解しているものはまるで少なかったのである。 ファシストの手先となった社会民主主義、第二インターナショナルがどんな階級的裏切りを行っているか。それとの闘争も形象化されていない。 ただ一つ総・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ ただ、フットボール競技場前の広場へ、アルバート広場に群っている通りな、いろんな物売りが出ていて、あっちから巡査がやって来るのを見るとパッと蜘蛛の子ちらすように逃げ出すところは、活々した日常生活の光景からの断片で、そこのところで笑わない・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・オリンピック村の建物は競技がすんだ後も残るから、それを下附すればアパートメントとして収入を得られる。だから、それで償いは十分につく、という説の上に立てられた計画であるらしい。話したひとは、眉のところに独特の表情を泛べて口元を曲げながら、でも・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
出典:青空文庫