・・・う言葉によっては既に新しい刺戟を与えられないが、服飾や愛の技巧の研究に女が公然と物を云うようになると同時に、そういう趣味的な面を通じて、案外な程度に、復古へ誘いこまれ、性的な交渉では女が受身という点が粉飾的に強調されている。日本が、本当の自・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・日本の悲劇の粉飾として存在するという事情について、新しい人間性にめざめつつある青春は多くのことを考えずにはいられなくされているのである。 社会一般の経済困難、戦争回避のために世界の良心が奮闘しつつある事実。日本の良心と学問の自由のための・・・ 宮本百合子 「日本の青春」
・・・としたらどうでしょう。粉飾なくていいではありませんか。「婦人」という字のわからない女はない。だが「女人」という文字をこのむ女には、われわれが清算しようと努力する過去の階級的遺物がきっとある。題を、スッパリ分りやすくすることによって、先ず雑誌・・・ 宮本百合子 「「女人芸術」か「女人大衆」かの批判について」
・・・五ヵ月後、彼が遂に死んだ時も、母はこの濁世に生きるには余り清純であった息子の霊界への飛翔という風に、現実の敗北を粉飾してその心にうけとったのであった。 その時十三ばかりの少女であった妹は、自分も自殺したら母が少しは可愛がってくれるように・・・ 宮本百合子 「母」
・・・の屈従は宿命的なものではなくて、プロレタリア解放運動達成によって達せられるものであることをも明らかになし得ない。 云わずしてすぎる。見ずしてすぎるという高踏派的態度は実は「無力」の粉飾なのである。 プレハーノフの女弟子、ソヴェト・・・ 宮本百合子 「婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?」
・・・が、この插話がもし実際あったことなら、本当の面白さは後から粉飾された小天使めいた解釈とは別のところにあると思われる。小さい犬を可哀そうがる心は、子供にとって普通といえる自然の感情だけれども、その感情を徹底的に表現して、犬の脚に副木をつけるま・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・日本文学の歴史において一つの画期を示したこの自我の転落は、当事者たちの主観から、未来を語る率直悲痛な堕落としては示されず、何か世紀の偉観の彗星ででもあるかのような粉飾と擬装の下に提示され、そこから、文学的随筆的批評というようなものも生じた次・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
出典:青空文庫