・・・然るに垢抜けのした精美された心持ちで考えると、自分の児は可愛いには違いないが、欠点も仲々ある、どうしても他所の児の方が可い、併し可愛いとなる。これと同じ事で、文学にしがみ付いて、其でなきゃ夜も日も明けぬと云うな、真に文学を愛するもんじゃない・・・ 二葉亭四迷 「私は懐疑派だ」
・・・資本主義社会が西欧で確立した十九世紀に、その基盤としての生産関係を究明して、その矛盾とその合則の発展の過程を、共産主義社会の出現にまで追究した人間精神を、私たちは精美なものとして感じることは不可能だろうか。地上のあらゆる生物のうちで、自分た・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・の姿においてその地方色の鮮やかさにおいて、または歴史的精美さにおいて力強く各自の芸術の中に活かそうと努力した。例えばメリメは「コロンバ」や「カルメン」において。ゴオチェは華美なアントニーとクレオパトラのロマンスの描写において。デュマはその歴・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫