・・・ 広く読書することも必要であるが、指導書を精読することは一層大切である。 それは問題の所在と、その難点とを突き止め、これが解決の方法を示唆するものだからである。たとい満足な解決が与えられなくとも、解決の方法をつくし、その難点と及び限・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・聖書を一度、情熱を以て精読した人なら、誰でも知っている筈のものを、ことごとしく取扱っているだけであった。この程度の「キリスト伝」が、外国の知識人たちに尊敬を以て読まれているんなら、一般の聖書知識の水準も、たかが知れていると思った。たいした事・・・ 太宰治 「世界的」
・・・他人の研究を記述した論文を如何によく精読したところで、その研究者自身の頭の中まで潜り込む事が出来ない以上は、その人の得た結果を採用するという事にはやはりこのイズムの匂がある。 しかしそこまで考えて行くと、人間の知識全体から自分の直接経験・・・ 寺田寅彦 「鸚鵡のイズム」
・・・しかし今は時勢に鑑みまた自分の衰老を省みて、今なおわたくしの旧著を精読して批判の労を厭わない人があるかと思えば満腔唯感謝の情を覚ゆるばかりである。知らぬ他国で偶然同郷の人に邂逅したような心持がしたのである。 かつて大正十五年の春にも正宗・・・ 永井荷風 「正宗谷崎両氏の批評に答う」
・・・この一冊の本を精読すれば、私たちは他の王朝文学の全般をよむ場合に先ず知っていなければならない当時の社会事情、衣食住、女性の生活、文学の系列をも学ぶことが出来る。清少納言の婦人及び芸術家としての生活に対して、著者は穏かな表現のうちに実感をこめ・・・ 宮本百合子 「若い世代のための日本古典研究」
出典:青空文庫