・・・評伝は十二月初旬小説が終ってから再びつづけて、前半のように緻密にして生活的であり、生活と芸術とその歴史性の掘下げでユニークなものを完結します。小説もそのように生活のディテールと活力の横溢したものにしたいと思います。「乳房」を書いているから、・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・そして、緻密な理論的考察と、自由な心の持つ新鮮な覇気とは、アメリカを毒す、余りに群衆的な輿論から毅然として、彼女の道をよき改革へ進めますでしょう。 斯ういう婦人の裡には、真個に跪拝すべきよき力が漲って居ると思います。時には、うんざりさせ・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・そしてまた、この長編が極めて緻密に史実を調べられ、思想的背景をさぐられ、人物の配置も客観的にされながら、窮極には作者藤村の内面的なムードで統一されていて、その意味からはやはり主観的な写実を脱していないということも面白い。 人道的な感情で・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 横光利一という作家は、頭脳のある程度の緻密さと、作家として大切な生理的気力を持ち、そうざらにはない男というべきであろう。その横光にして、久内によって代表されるインテリゲンチアというものがなぜ常に自分たちの「思うことと実行することが・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・の驚くべき冷静、緻密な描写を運びつつ、小説を書いていると塵っぽくてやり切れない、だから詩をつくると云い、日に数首ずつの漢詩をつくっている。私に漢詩を味う力はないが、卒読したところ、それらの詩は、どれも所謂仙境に遊ぶ的境地を詠ったものが多い。・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・ 社会問題にいくら高尚な理論があっても、いくら緻密な研究があっても、己は己の意志で遣る。職工にどれだけのものを与えるかは、己の意志でその度合が極まるのである。東京化学製造所長になって、二十五年の間に、初め基礎の危かった工場を、兎に角今の・・・ 森鴎外 「里芋の芽と不動の目」
出典:青空文庫