・・・ したがって、出版恐慌を理由として、これらの戦後派の先輩たちがジャーナリズムの上にうけた不利――すなわち、社会的文学的発言の範囲の縮小の本質は、とりもなおさず、理性に立つ現実探求の精神の主張、国の内外のファシズムと戦争挑発に対する抗議と・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・民法が戸主の権利を縮小したからといって住宅難で若夫婦が父兄の家の一隅を借りていなければならないとき、資本主義社会で育ってきた人々の心持の中は、金銭問題や、義理がからんで、実際の封建的な家長の気分はのけられません。住宅問題は、政府の空手形の標・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・プロレタリア文学運動の後退は、とりも直さず日本の全住民の思想的自由の限界の縮小である。過去数年間、新しき文学と作家の社会性拡大のために先頭に立っていたプロレタリア作家たちが、続々とあとへすさって来て、林氏のように自身の文学の本質を我から切々・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・人類の文化において、第二次世界大戦後、個人主義が地盤を縮小したということは、個人や個性が消滅したということではなくて、真に個性や価値や自由な発展を確保するためには、その個人の生きつつある社会が、民主的条件を現実にもっていることがどんなに重大・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・さもなければ一方の軍備拡張が大騒ぎで宣伝されている時に一方の国がゆうゆうと軍備縮小をするはずがありません。 ところでまず私たち自身が平和を希望していることをはっきり自覚しなければなりません。 世界に何千何万人の未亡人がいるか、孤児が・・・ 宮本百合子 「世界は平和を欲す」
・・・ 米価惨落・生糸惨落・造船事業の縮小は来年の春までに数万人の失業者を更に街頭に送り出すであろう。 J・O・A・K! 梅村蓉子は今度結婚することになりました。 浜口首相の腹へピストルの玉がとび込んだのは日本へかえって二日目ぐらいの・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
・・・ここでは妙に身丈の縮小したように見えるロンドン人が山高帽の波を打たせて右往左往やっている。一つの騎馬像が人間波浪から突立って見えた。英蘭銀行の八本の大円柱がこの三角州の上で堂々と塵をかぶりつつ、翼を拡げている。 貧乏人町東端の方からやっ・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・今もターニャにアメリカ経済恐慌で、フォード自動車はどれだけ生産を縮小したかということを喋くっている。 イワンは皆の知ってることしか知らないのだが、数字だけは特別出来な頭で時に教授より暗記しているおかしいやつ! 学生たちは、互に幼稚園・・・ 宮本百合子 「ワーニカとターニャ」
・・・すなわち、菅氏は、形而上学によって整理・構成されている自分の理性、過去の形式論理にしたがって操作される自身の理性の機能を、たたかいの現実にしたがって拡大することも出来なかったし、縮小させることも出来なかったのでした。 自由党の委員篠田が・・・ 宮本百合子 「若き僚友に」
・・・同時に、あれ程多くの血を流し、あれ程多くの人々の命を失い、国民生活を互に破滅させ合いながら、その結果としての国際連盟や軍備縮小会議などは平和建設の上に極めて薄弱な力しか持ち得ないことも、ヨーロッパの人々は発見していた。国際連盟が出来たと同時・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫