・・・というものが現実その書棚のまわりにも群がって埃と膏と若さの匂いをふりまいている様々の心と体との生々しい人間たちではなくて、その本の著者の心情からスーと遠のいて自然科学的な観察の対象と化された半透明な、自発的な意志のない、海月か何ぞのように感・・・ 宮本百合子 「生態の流行」
一九三七年十二月二十七日、警保局図書課が、ジャーナリストをあつめて懇談会を開く。その席上、ジャーナリストが自発的に執筆させないようにという形で、執筆禁止をした者、作家では中野重治、宮本百合子、評論家では岡邦雄、戸坂潤、鈴木・・・ 宮本百合子 「一九三七年十二月二十七日の警保局図書課のジャーナリストとの懇談会の結果」
・・・ 他人のようにはっきりこれ等の点を考えると、元、私は何かの力でそれを更え、雄々しい、創造的な、自発力に満ちた人に代えたいと思い、焦れ、苦しみ、涙を出し、Aを苦しめた。今はもうまるでその点では自分と彼との生活の中心をきり離してしまった。・・・ 宮本百合子 「一九二三年夏」
・・・共産青年男女を中心として、党員でない積極的分子が自発的にあつまった。 生産の現場で、こういうウダールニクが社会主義建設のために行った階級的なたたかいは、五ヵ年計画ときりはなせない歴史的事実だ。ベズィメンスキーは或る電車製作工場内で、組織・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ 可愛ゆいと云っても、徒に贅沢な着物を着せるではなく、ちやほやするではなく、たとい転んで泣いても自分で起きさせ、自分で壊した玩具なら、自分でなおすなり、工夫してそれを巧く使えるようにするなり、何でも自発力で生活させようとする意識は、如何程・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・けれども、その絵の見えなくなった動機が画家そのひとの内部から自発したものでなかったり、ジャーナリズムの文化的成長の表現としての淘汰でなかったりして、全く外部の影響で、きょうは何でも云えるというようなもののちからで消されたとあれば、それにはや・・・ 宮本百合子 「日本文化のために」
・・・人間らしい自発的な選択や愛の歓喜や母の喜びなどというものが、万一「家門」の必要と一致するようなことがあれば、若い女性はその意外さに寧ろおののいたであろう。 封建社会は徐々に近代の資本主義の社会に発展してきた。新しい社会のエネルギーに対し・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・にとって不安なく就職口をもたらすばかりでなく、さらに、社会的生活の経験として職業につく決心をしている人たちにその実行をたやすくさせるのみならず、これまでなら、上の学校へゆくほどの好学心もなく、さりとて自発的に職業の場面へ身をさらしてゆくほど・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・百五十一万人の婦人労働者をふくむ日本のプロレタリアート、農民、小市民の婦人大衆に向って、彼女に真の解放と幸福とを与えるプロレタリア世界観を啓蒙し、同時に階級の半身として闘争する婦人大衆のあらゆる自発性を反映させるものとしてわれわれの婦人雑誌・・・ 宮本百合子 「婦人雑誌の問題」
・・・それは、どうしてプロレタリア文学運動の中では、一例をあげれば職場でのストライキが高潮に達した時にあぶなっかしい幹部として監視をつけられたというような話のある人や、左翼の政治的活動から自発的に後退の形をとってきたような人が、組合にいたとか、組・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
出典:青空文庫