• ･･･　夜盗の類か、何者か、と眼稜強く主人が観た男は、額広く鼻高く、上り目の、朶少き耳、鎗おとがいに硬そうな鬚疎らに生い、甚だ多き髪を茶筅とも無く粗末に異様に短く束ねて、町人風の身づくりはしたれど更に似合わしからず、脇差一本指したる体、何とも･･･ 幸田露伴 「雪たたき」

• 　月の冴えた十一月の或る夜である。　二羽の鴨が、田の畔をたどりたどり餌を漁って居る。　収獲を終った水田の広い面には、茶筅の様な稲の切り株がゾクゾク並んで、乾き切って凍て付いた所々には、深い亀裂破れが出来て居る。　･･･ 宮本百合子 「一条の繩」

出典：青空文庫

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