・・・プロレタリヤは、行進曲に歩調を合すべきです。 自由を尊ぶなら、なぜ鏈を切って機械化から脱しようとしないのか。真に愛を人生に抱くなら、なぜ資本主義文明が、益々人間生活の不平等を造りつゝあるのに、黙止するのか。科学的精神を尊重するなら、この・・・ 小川未明 「芸術は革命的精神に醗酵す」
・・・私達、真の無産者は、喜びを共にし、苦しみを共にし、永久に、平和な、そして自由な、青空の下に相抱いて生きるという信念に於てのみ、感激し、行進曲が奏でられなければならぬのです。 この精神を有する芸術のみが、即ち民衆の芸術であるということを私・・・ 小川未明 「民衆芸術の精神」
・・・赤玉が屋上にムーラン・ルージュをつけて道頓堀の夜空を赤く青く染めると、美人座では二階の窓に拡声機をつけて、「道頓堀行進曲」「僕の青春」「東京ラプソディ」などの蓮ッ葉なメロディを戎橋を往き来する人々の耳へひっきりなしに送っていた。拡声機から流・・・ 織田作之助 「世相」
・・・そうして自由に放恣な太古のままの秋草の荒野の代わりに、一々土地台帳の区画に縛られた水稲、黍、甘藷、桑などの田畑が、単調で眠たい田園行進曲のメロディーを奏しながら、客車の窓前を走って行くのである。何々イズムと名のついたおおかたの単調な思想のメ・・・ 寺田寅彦 「軽井沢」
・・・ 石段の上下にあふれている見物の群衆は一斉に賑やかな行進曲の聞える上手の一団を眺めた。 近づいて見ると―― ハッハッハア。これは愉快だ。張り物である。 ウンとふとってとび出た腹に金ぐさりをまきつけて、シルク・ハットをかぶった・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ラジオ拡声機の大ラッパは広場じゅうへ活溌な行進曲を弾き出し、全景は赤い! 赤い! 黒い壁となって河岸まで押し出した群集は、カーメンヌイ・モストのたもとで一時ホッと息をいれた。河風は涼しい。遠くで夜空を燃している光の家、労働宮のイルミネー・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・明徴、日本精神の昂揚、個人主義、自由主義、功利主義、唯物主義の打破等精神総動員の趣旨の徹底をはかり学生、生徒、児童等には愛国行進その他団体運動を行わせ、これらの集会、行進等に際しては今回選定された愛国行進曲を合唱させること等を報じている。聖・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・今日の科学の可能と明日の科学のために未だのこされている客観的現実の豊饒さ、科学的方法が年から年へ進歩する行進曲の意味を心と身にひき添えて科学者たることを生きる歓びと感じ得る科学者。科学的探求を、云うところの学問として静的に見ず、社会と歴史と・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ だから今夜、クラブ音楽部員は活溌な行進曲を奏し、 一、二! 一、二! 何々区ピオニェール分隊がどっしり重い金モールの分隊旗を先頭にクフミンストル・クラブの広間を行進して来た。 右、左! 右、左、止れ! 分列。中・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ 六列横隊で、自分達の工場音楽隊を先頭にして、行進曲と共にやって来る。愉快そうで、整然としていて、胸も躍る光景だ。「五ヵ年計画ヲ四ヵ年デ!」「ブルジョア反ソヴェト陰謀ヲブッ潰セ!」 次から次へ赤いプラカードが来る。あいまには・・・ 宮本百合子 「勝利したプロレタリアのメーデー」
出典:青空文庫