・・・歌に景曲は見様体に属すと定家卿もの給うなり。寂蓮の急雨定頼卿の宇治の網代木これ見様体の歌なり。とあり。景気といい景曲といい見様体という、皆わが謂うところの客観的なり。もって芭蕉が客観的叙述を難しとしたること見るべし。木導の句悪句には・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・を読み終ってから、私の心に起ったものは、世の中は見様で何と云う相違があることだろう! と云う驚きでした。例としてあげられた人々、場合は、勿論ありますでしょう。まして、私の狭い見聞は、米国の、而も紐育市附近の知識階級に限られていると云ってよろ・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 一番思い出さるべき顔の様子までその様に自分のものは不明瞭であるから、これから書いて見様とする種々な時に起った様々な事柄の互の間には何の連絡もなく、理由も時間も明かでない事の方が多い。 また彼の死ぬまでの経歴等と云うものも私は云う積・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・が、いかにも気味の悪い形になって居て、見様では、よく西洋のお伽話の插絵の木のお化けそっくりに見え、風が北からザーッと一吹き吹くと、木のお化けは、幾百も幾千も大きな群になって、骨だらけの手をのばして私につかみかかろうとする様だ。川の水も減って・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫