・・・ 彼はまた短歌や俳諧を論じて「フレーセオロジーに置き換えられた象形文字」であると言い、二三の俳句の作例を引いてその構成がモンタージュ構成であると言っている。 私はかつて「思想」や「渋柿」誌上で俳諧連句の構成が映画のモンタージュ的構成・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・またそれを口で話して一定の聴衆が聞くだけでもそれは文学ではない。象形文字であろうが、速記記号であろうが、ともかくも読める記号文字で、粘土板でもパピラスでも「記録」されたものでなければおそらくそれを文学とは名づけることができないであろう。つま・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・を形成する象形文字のような影像を一つ一つ夢思想の国のこれに相当する言葉に翻訳してみれば、それはちゃんとした文章となり、そうしてそれは驚くべくおそるべきわが内部生活の秘密を赤裸々に記述するものとなるのである。しかもその一つ一つの象形文字のよう・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・そして、生命という意味の象形文字は、自分たちの顔にあったと同じようなきれの長い真中に瞳の据った一つの眼にきめていた。 ギリシア人たちが、生命は動く元素から成るといい、デモクリトスが原子論をとなえたのはひろく知られているが、その時から千三・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・漢字をいきなり象形文字と考えるのは非常な間違いで、音を写した文字の方が多いこと、同じ音で偏だけ異なっているのは偏によって意味の違いを表示したもので、発音的には同一語にほかならないこと、従って一つの音を表示する基準的な文字があれば、象形的に全・・・ 和辻哲郎 「露伴先生の思い出」
出典:青空文庫