・・・文学におけるレーニン的党派性の貫徹を、真のボルシェヴィク作家にふさわしく熱情と世界観によって、実践した。 彼を知るものを常に驚歎させた同志小林の不断の創造的エネルギーの源泉は、実にプロレタリアートの革命的エネルギーそのものの中にあったの・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
・・・が、お石は彼が主人であるという名に対してとった一種の形式なので、若し彼がいけないと云ったところで、自分が遣ろうという決心はどこまでも貫徹させるつもりではあったのだ。 話の模様では大変いいらしい。 けれども町の様子や、そういうところの・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・ 母は、今の世の中のしきたりにおとなしく屈従して暮すには強く、しかし強く社会的に何事かを貫徹して生きるためにはまだ弱かった。或る意味では世間知らずで家庭にだけ根をおいた感傷的な、そうかと思うと打算的な女性であった。正当なはけ口を見出せな・・・ 宮本百合子 「母」
・・・つき進んで云えば、従妹ベットの心持が、あのような規模と貫徹性とをもって発動し作用し得るかどうかについても一応うたがわれないこともないのである。 バルザックと同時代の作家であるメリメの作風と比べて、これは又何たる相異であろう。フランス散文・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・男にしろ女にしろ、めいめいの条件に応じて生活意欲を貫徹するためには夫婦の結合にもそれがプラスの力となるものと、マイナスの作用を及ぼすものとある。そういう一般的な常識の範囲内で、しかし猶婦人作家に関する社会的な問題として考えていたのであった。・・・ 宮本百合子 「夫婦が作家である場合」
・・・ 日本のわたしたちは、全面講和によって世界の全面に対して平和日本の人民であろうとしている誠意を表現し、それを貫徹してゆかなければならない。戦時中日本の政府は、侵略主義の本質を、見ための珍しい美しさや異国情緒でカムフラージュしようとして日・・・ 宮本百合子 「婦人デーとひな祭」
・・・を書こうとも、取材を貫徹して、維新が、封建的地主絶対主義支配の門出であるという特性をわれらに示し、こんにちの窮乏した農民の革命的高揚、その娘が年々多く吉原に売られてくるという慄然たる事実の根源は、明治維新の農民搾取制度にみることが摘発されな・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・ろうとも、偶然の機会から相寄った一組の男女が、自然のままに自分達の感情を伝え合わずにはいられないということを、一応は肯定するところまで、当時の人間性の本能的な理解が拡がって来ており、しかも、その愛情の貫徹のために、社会の枠を自分達の力で破壊・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・と感じて、その感じには物でも憑いているのではないかという迷信さえ加わったので、孝女に対する同情は薄かったが、当時の行政司法の、元始的な機関が自然に活動して、いちの願意は期せずして貫徹した。桂屋太郎兵衛の刑の執行は、「江戸へ伺中日延」というこ・・・ 森鴎外 「最後の一句」
・・・彼女は Stil を貫徹した。元来スチルというものは学校の先生が言うように古えの芸術家から学ぶべきものではない。人間の奥底にひそんでいるのだ。自分の胸から掘り出すべきものだ。デュウゼはそれを知っていた。自分の芸によって観客の感激――有頂天、・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫