・・・をかき得たのは、大なる地の脈動を自身の体のなかにもっているというその内奥の近似が、彼女の人間生活の諸相への愛と理解との根底にあったからだと思う。「イアリング」のようなアメリカ文学としてみれば珍しいリリシズムで貫かれている作品にしろ、フラ・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・四月六日の『読売報知』には、ヒトラー、ムッソリニ礼讚の自著『世界の顔』についての、外人記者との対談で、「武士道は日本精神の精髄で、ナチス精神との間には多分の近似性がある」と、心ある全国民を戦慄させる断言をしている。ヨーロッパ、アメリカの政治・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・千差万別の事情ではありながら、大略今日の物質と精神の窮乏の状態、それに屈し切れない人間性の身もだえに於ては百万人の若い女が近似している。それを積極的なものに発展させ、転化させようとする努力こそ必要である。〔一九三七年八月〕・・・ 宮本百合子 「私たちの社会生物学」
・・・私は自分の問題と彼の問題とがきわめて近似していることを感じた。ついには彼の内に自分の問題のみを見た。 その問題は概括すれば「いかに生くべきか」に関している。自分の性質と要求との間の焦燥。自己を真実に活かすための種々の葛藤。自己の価値と運・・・ 和辻哲郎 「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」
出典:青空文庫