・・・ 幻滅の悲哀は、人間生活の何の部面にも見出された事実ではあったが、殊に、各自の家庭に、最も、そのことを見出した。恋愛至上主義によって、結婚した男女は、いまや、幻滅の悲哀を感じて、いまゝで美しかったもの愛したものに、限りない憎悪と醜悪とを・・・ 小川未明 「婦人の過去と将来の予期」
・・・ 社会の内部の複雑な機構に織り込まれて、労働においても、家庭生活においても、その最も複雑な部面におかれている婦人の諸問題を、それだけきりはなして解決しようとしても、それは絶対に不可能であった。世界を見わたせば、一つの国が、封建的な性質か・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・ 一九三七年と云えば、中国への侵略戦争を拡大しながら日本の内部のあらゆる部面に軍事的な専制が強力にしかれはじめた時期であった。二・二六事件があったのが前年の三六年のことである。 一九三八年一月から中野重治と私と他に数人の評論家が、思・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・やすいからこそ女があらゆる部面でつかわれている。 それが歪んだ人間の使いかたであるからと云って、その歪みを生き身にうけて、云って見れば自分たちの肉体で歴史の歪みをためてゆかなければならない私たち現代の女が、歪みのままに自分の気持を萎えさ・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・ 民主戦線ではその広さと、そこに包括される社会活動の部面が多様であるにかかわらず、他の一面ではこれまで社会各層がもたなかった互いの共通語をもつようになってきている。労働者階級のファシズム反対という声と、学者たちが学問の自由のために叫ぶフ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・発足したばかりの会ではあるが、日本の民主的文化の確立と平和のためにこの会の活動が期待される部面は広汎である。 五、学生の抗議。 今議会ですべての公定価格を七割値上げした政府は官立専門学校大学の月謝を三倍の値上げに決定した。月謝値・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・ これまで云いもしなかった社会部面について書くと、作家ABCは消滅して、啓蒙パンフレット屋がかく通りの用語、表現で作家が書きはじめるということは、過渡期のあらわれとしても、現代文学の明日への真実な成長のために、考えさせるところが少くない・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・日本の婦人が、人民の生活の安定と平和とのために尽瘁しなければならない部面は日に日に多くなって来ている。 一九四七年十一月〔一九四七年十二月〕 宮本百合子 「再版について(『私たちの建設』)」
・・・科学上の原理の発展への努力、その努力によってもたらされた成果の後を応用的な部面が跟いてゆくのは必然であって、日本の科学性というものは、歴史との関係から見てもこの意味でどの程度自給自足であるのか。そのことも考えられる。 現在の私たちが生き・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・ 若い婦人を働かせるために何の特別な設備もない重工業の部面に、どんどん未来の母たちが吸収されて行っている重大な意味については、世人もまったく無関心ではないと思う。政府も、婦人にふさわしい仕事と衛生設備について一言ふれているのではあるけれ・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
出典:青空文庫