・・・ハリコフでの国際革命作家拡大プレナムの決議は日本のプロレタリア文学運動が、シッカリと大衆の中に根を張り、国際的な連関において前進して行くために、もっとも重要な、さしあたって第一番に議題として我々が討議し、具体化しなければならない幾多の貴重な・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・ 栗本は、何か重要なことを忘れてきたようで、焦点のきまらない方に注意を奪われがちだった。すべてが紙一重を距てた向うで行われているような気がした。顛覆した列車の窓からとび出た時の、石のような雪の感触や、パルチザンの小銃とこんがらがった、メ・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・馬琴が用いましたその小説中の言語と、当時の実際の言語とも一つの重要な関係点でありますれば、馬琴の描きました小説中の風俗習慣や儀式作法と、当時の実際の風俗習慣や儀式作法との関係も、また重要の一カ条でございますし、馬琴の小説中にあらわれて居りま・・・ 幸田露伴 「馬琴の小説とその当時の実社会」
・・・ 毎日々々が同じな、長い/\退屈な独房で、この仕草の繰り返えしは一日の行事のうちで、却々重要な場面をしめている。ある同志たちが長い間かゝって、この壁の打ち方から自分の名前を知らせあったり、用事を知らせあって連絡をとったときいたことがある・・・ 小林多喜二 「独房」
・・・然し、とう/\持って行き処のなくなったその人達は最後に、重要書類と一緒に家へ持ってきた。もうやられているので、二度も「ガサ」が無いだろうと云うのだ。六十に近いお前のお母はそれをちアんと引受けた。淋しいだろうと云うので、泊りにきていた親類の佐・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・ これまで世界中で一ばんはげしかった地震火災は今から十五年前に、イタリヤのメッシーナという重要な港とその附近とで十四万人の市民を殺した大地震と、十七年前、サンフランシスコの震火で二十八町四方を焼いたのと、この二つですが、こんどの地震は、・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・「けれども、だね、君たちは、一つ重要な点を、語り落している。それは、その博士の、容貌についてである。」たいしたことでもなかった。「物語には容貌が、重大である。容貌を語ることに依って、その主人公に肉体感を与え、また聞き手に、その近親の誰かの顔・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・たが、どうも、そのニッポンの大サンショウウオの骨格が、欧羅巴で発見せられた化石とそっくりだという事が明白になってまいりましたので、知らぬ振りをしているわけにもゆかず、ここに日本の山椒魚が世界中の学者の重要な研究課目と相なりまして、いやしくも・・・ 太宰治 「黄村先生言行録」
・・・そして彼の仕事の内容は分らないまでも、それが非常に重要なものであって、それを仕遂げた彼が非常な優れた頭脳の所有者である事を認め信じている人はかなりに多数である。そうして彼の仕事のみならず、彼の「人」について特別な興味を抱いていて、その面影を・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・ 浮世絵の画面における黒色の斑点として最も重要なものは人物の頭の毛髪である。これがほとんど浮世絵人物画の焦点あるいは基調をなすものである。試みにこれらの絵の頭髪を薄色にしてしまったとしたら絵の全部の印象が消滅するように私には思われ・・・ 寺田寅彦 「浮世絵の曲線」
出典:青空文庫