・・・程度として、「ことに我輩が日本女子に限りて是非ともその知識を開発せんと欲する所は社会上の経済思想と法律思想と此の二者にあり」とする諭吉の言説は、とくに注目されなければならない重要な点だと思う。婦人に経済法律とは異様にきこえるかもしれないが、・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・時代に欠けていた発表場面の自主的な開発、あるいは文学的技術の鍛錬、よりひろい範囲で文学の創造的エネルギーを進歩的な方向において、包括しようとする活動などがそれぞれの刊行物を中心として活溌に行われているわけである。刊行物を中心とするグループも・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・ 私共は、出来る丈、広く、深く、あらゆる人類生活の経験を、自己開発の資料としたく思わずにはいられません。〔一九二二年三月〕 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・半ば眠り半ばは確乎と覚醒している厖大なアジアの一国、中国で、資本主義以前にありながら、しかも、目下の急速な世界情勢の動きにつれて、豊饒な民族資源が才能さえも含めていきなり最も民主的方法で開発される十分の可能をもっているという事実は、私たちに・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・将来の日本の文学の豊富性のなかには、こういう未開発の分野での開花も眺めわたされる訳である。 バックの作風から拡る連想の一つとして、やや一般的な作家の態度についての話題であるが、この間、読売新聞の座談会で、数人の婦人作家があつまり、い・・・ 宮本百合子 「パァル・バックの作風その他」
・・・文明というと、たとえば十六世紀の日本の文明に二十世紀日本の文明を対比しているように、非常に大づかみにある時代なり社会なりの到達した人智開発の水準を概括して呼べると思う。その場合には、客観的にその社会がある水準に達している文明の恩恵に直接浴し・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・の感情は、ゴーリキイの心に全く新たな一面を開発する力をもっていた。人間の精神の裡にこういう感情があるという発見、そして、その感情に身を献げて暮し得る一群の誠意ある人々が此世にいるという事実。これは、ゴーリキイが今まで何処でもめぐりあったこと・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・悪気流は、人間らしい知性の開発と光彩とを圧しつつもうとしている。それに対して抗いつつ、或る必要な力をもっていないという自覚に苦しんでいる、そこから現代のトスカが湧くのである。知性の喪失を、梶が謳歌していることに対して、もし、苦しんでいる知識・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・の程度として、「殊に我輩が日本女子に限りて是非とも其知識を開発せんと欲する所は社会上の経済思想と法律思想と此二者にあり」婦人に経済法律とは異様にきこえるかもしれないが、その思想が皆無であるということこそ社会生活で女の無力である原因中の一大原・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・ 明治の政府になってから五年目に安場保和の建案を発端とし、大久保利通の内地の開発事業の一つの典型として、福島県でも猪苗代湖から疏水をこしらえて、これまでは鎌戦さのあった草地へ田を作る仕事に着手した。 さまざまの政治的変動の余波を蒙っ・・・ 宮本百合子 「村の三代」
出典:青空文庫