・・・ 青年学生はいずれ関心事たる恋愛につき、いろいろな説を参考するもよかろう。また文芸や、映画でその種々相に触れずにもいないわけである。だが結局は自分の胸にわいてくるイメージと要請とをもって、自分たちの恋の世界を要求し、つくり出すべきだ。・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・更に、「ルポルタージュなるものは『物が人をうごかす』という唯物論的文学観によるのであり、今日この形式の文学が文壇の関心事となったこともそこに根拠があるのである」と、結ばれているが、既に現代の文学観は、「物が人を動かす」面にだけ立脚したプレハ・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・を放言して、パージにかかわらず事大主義の政治的発言にまで立ち至っている林房雄の考え方は、一九三七年彼が官吏・軍人・実業家の関心事、すなわち侵略と搾取への情熱を文学の中心課題とすべきであるといった本質と、なんらちがったものでないことを知ること・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・ 個人の問題ではなく、文学の置かれている非道な境遇として、中野や私は、なんとかそれを全般の関心事としたかった。進歩的な精神をもち、行動も消極ではないある評論家を二人で訪問した。今回の情報局のやりかたは正しくないという意見の、雑誌編集者も・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・毎日の関心事、その心持がまた違う。例えば、モスクワの金属工場に働く労働者が、飴牛の姙娠と出産とに、どんな熱情をもつことが出来るであろう。 党も、同伴者作家団を認めたと同じ友誼的指導的な態度で、全露農民作家協会に対して来た。一九二五年の文・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・早い話が、集団農場組織の問題が、あらゆるソヴェト市民の関心事となったのはいつからだ? 一九二八年末からだ。生産能率増進のためのウダールニクが各工場役所の内部に組織され、それに参加した各員が、てんでんの場所で反革命分子との激しい闘争の経験をも・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ 一九五〇年における日本のまじめな人民の関心事は、全面講和によって世界平和に協力することです。パール・バック女史は、日本人は食べるものと住むところさえあれば、あとはどうでもよいのだという意味の意見を発表されているそうですが、人民の精神は・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・ プロレタリア作家夫婦にとっての関心事は、それから先に在ると私は思う。プロレタリア婦人作家の実にこまごまと粘りづよい現実の重荷の内容は、良人も作家であるためにやりにくいという割合を遙か越えて、今日の社会の広汎で具体的な階級的重圧に作用さ・・・ 宮本百合子 「夫婦が作家である場合」
・・・だが母はまた母の関心事があって、いつもそういう私の元禄袖の後姿だけは見て、座敷を出ればもう忘れて立ち働いたりそれなり外出したりしたのだろうと想像される。 小学校に入れた時からもう六年になるのを心待ちにし、小学でも出たらこうと一家の生計と・・・ 宮本百合子 「行方不明の処女作」
・・・新しい世界人の関心事は人生の目的である。人間の生活そのものが、すべての問題の焦点に来る。国家は、人生目的の実現に対して有利であるという事をほかにして、もはや存在の理由をもたないのである。 かくて人間の生活は、永い間の抽象化を脱して、久し・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫