・・・ 母もさすがに呆れたのか、笑いながら陳弁するには、お父さんのお留守のあいだに雑誌社のかたが原稿料をとどけて下さったので、この折と吉祥寺へ行って、思い切って買ってしまいました、この受信機が一ばん安かったのです、マサ子も可哀想ですよ、来年は・・・ 太宰治 「家庭の幸福」
・・・私は冷汗流して、いかに陳弁しても、佳人は不機嫌な顔をしている。私の腕は、人一倍長いのかも知れない。 随筆は小説と違って、作者の言葉も「なま」であるから、よっぽど気を付けて書かない事には、あらぬ隣人をさえ傷つける。決してその人の事を言って・・・ 太宰治 「作家の像」
・・・において、同志藤森は、作家同盟指導部というものの陳弁役を行っているように見える。林房雄と自身とのけじめは一応明らかにしているようでありながら、本質的には同志林に追随している。作家同盟の指導部は中條のように考えてはいない、君を愛している、「中・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・尤も考えてみれば刑務所への手紙は幾重もの検閲を経るのであるから、はっきりしたことの書けるわけはなかったのに、思慮が足りなくて陳弁された。 原稿は、いずれ又のこととして事務上の片は簡単についた。しかし、わたしの心の内には沢山の疑問がのこさ・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・わたくしは個人的陳弁のためにこれを書いているのではなく、事実の尊重と党内デモクラシーのため作家の泣きねいりの習慣の克服のために書きます。 宮本百合子 「文学について」
・・・丸公値上げについては、都留副長官が、女性改造という婦人雑誌の対談会で、民報の森沢氏からつっこまれて大汗に陳弁している。和田長官はこのメモの中では、まるでそういう事実は勤労者家計に関係ないことででもあるように丸公値上げのことはよけて通ってしま・・・ 宮本百合子 「ほうき一本」
出典:青空文庫