・・・しかも、現実においては、今日「女子の隷属の起り得ない」「原始女性は実にその活溌な労働性の故に独立的なのであり」得る原始的社会は、訳者の云われている通り恐らく「パプア島の食人種」のところぐらいにしか残存していまい。正に近代の娘、妻、そして母た・・・ 宮本百合子 「先駆的な古典として」
・・・の日本に横行している、笑わされたあとでは、気分がわるくなるくすぐりの調子である。崇仁親王という名と、その人のストリップ的なこのようなくすぐりと。この結び合わせこそ、「とんでもハップン」の隷属日本の風俗とたいこもち精神を代表している。庶民は、・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・家庭生活というものが部族に隷属した時代が去り、一人一人の希望、趣向、責任によって経営されるようになれば、個人の恋愛、結婚というものもまた、自ら各人の動機、経路、結果によって終始されるべきものとなるのではあるまいか。 恋愛、結婚等は、あら・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・尨大な繊維女工の群はブルジョア日本の特質をなすものでありますが、彼女等の生活は封建的隷属状態より少しも解放されて居らず、ブルジョアは彼女等に、漸く機械の操縦が出来る程度の教育しか許さないのです。 繊維女工以外の婦人に眼を転じても、事情は・・・ 宮本百合子 「婦人作家の「不振」とその社会的原因」
・・・よくならされた犬のように、ヒントで支配される隷属的人民をつくるための方法であるとさえ云える。 封建性がのこっているために、目前の権力に屈従しやすい日本の習慣の上へ、第一ヒント、第二ヒント、ヒントで導かれる心理習慣に抵抗しなかったら、わた・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・がいかに低い内容をもち、いかに封建的であり、隷属的であるかということをはっきり私どもに知らせていると思うのです。 おくれて、しかも速く進む日本の歴史の中ではブルジョア民主主義と人民的な民主主義と並んで重って或る期間進展してゆくから、人民・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・最近の定期大会では、世界平和の確保のために一層具体的な活動をすることと、児童のための活動が決定され、秋ごろにアジアの植民地、隷属国における婦人の大会が持たれることにきまった。 第二次大戦の歴史のなかで、日本の婦人の立場は、日本婦人自身に・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・それだのに何故、その判断と反する政党に隷属して、一応にしろ言論の自由のある今日、心ならずも、と汗を拭きつつその党のゴジ論をやるのだろうか。答えは明瞭である。目先の分別では、今日彼の属するゴジ政党は、その社会主義との盛り合わせで、多数党の一つ・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・ 山本氏は、封建的な芝居ものの社会で、作者が従来おかれていた隷属的な地位を引上げなければならないという、或る意味での社会的関心から、誰にしろ厭にきまっているいざこざに堪えて主張を押し通そうとしたのであった。 日本の資本主義の機構の中・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・自分が人を欲する時には人を征服して自分に隷属せしめる。自分の愛は、常に、自分を完成する要素としての人間に向う。自分は淋しさや頼りなさを追い払うために友情を求めたりなんぞはしない。友人の群を心持ちの上の後援として人と争ったりなんぞはしない。自・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
出典:青空文庫