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・・・よらで過ぎ行くところ、景を写し情を写し時を写し多少の雅趣を添う。 顔しかめたりとも額に皺よせたりともかく印象を明瞭ならしめじ、ことは同じけれど「眉あつめたる」の一語、美人髣髴として前にあり。 蒲団引きおうて夜伽の寒さを凌ぎたる句など・・・
正岡子規
「俳人蕪村」
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・・・予は心身共に健で、この新年の如く、多少の閑情雅趣を占め得たことは、かつて書生たり留学生たりし時代より以後には、ほとんど無い。我学友はあるいは台湾に往き、あるいは欧羅巴に遊ぶ途次、わざわざ門司から舟を下りて予を訪うてくれる。中にはまた酔興にも・・・
森鴎外
「鴎外漁史とは誰ぞ」