・・・梨は皮の色の茶色がかっている方が甘味が多くて、やや青みを帯びている方は汁が多く酸味が多い。皮の斑点の大きなのはきめの荒いことを証し、斑点の細かいのはきめの細かいことを証しておる。蜜柑は皮の厚いのに酸味が多くて皮の薄いのに甘味が多い。貯えた蜜・・・ 正岡子規 「くだもの」
・・・ 風呂場のわきにかなり大きい池があって、その水の面は青みどろで覆われ、土蔵に錦絵があったり、茶の間にはお灸の匂いが微かにのこっているという風な向島の家は、陰気でいつもいろいろのごたごたがあった。 向島のおばあさんと母とが、林町のうち・・・ 宮本百合子 「白藤」
・・・ 前の家、トタン屋根、青く土のかびた土間、 裏、青みどろの浮いている水たまりを隔ててすぐ小高い線路 ○三角形の空地 鶏、うさぎの棚。 ○むこうの森 島田川○家じゅうに戸棚が三尺の一間の一間ぐらいしかない。板の間に長持・・・ 宮本百合子 「Sketches for details Shima」
・・・――アリゾナ―― 青みどろの蔓った一つの沼。 四辺一面草の茂った沢地なので、何処からその沼が始っているか見当がつかない。 一隅に、四抱えもある大柳が重い葉をどんより沼の上に垂れていた。柳には、乾いた藻のような寄生木が、ぼ・・・ 宮本百合子 「翔び去る印象」
出典:青空文庫