・・・ また言語学者のほうからは、私の以上の扱い方が音韻転化の方則などを無視しているではないかという非難を受けるかと思う。しかしグリムの方則のような簡単明瞭なものは大陸で民族の大集団が移動し接触する時には行なわれるとしても、日本のような特殊な・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・ 英語の head はチュートン系の haubd といったような語から来ているが、音韻法則によるとLのカプトとは別だそうである。しかしこの「ハウプト」は、そんな方則を無視するここの流義では、やはり兜の組である。 頭部を「つむり」とも・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・そのrの喉音や語尾の自然な音韻が紛れもないドイツの生粋の気分を旅客の耳に吹き込むものであった。パンとゆで玉子を買って食う。ここでおおぜい乗り込んだ人々が自分ら二人にいろんな話をしかける。言語がよくわからないと見てとってむやみにゆっくり一語一・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
・・・しかし古代の人間は文法も音韻方則も何も知らなかった。明治の日本人がステンショとかオーフルコートとか称したことを考え、昭和の吾々がビルジングとかブデンとか云っていることを考えればこれくらいはゆるしてもらってもいいであろう。 このような類似・・・ 寺田寅彦 「短歌の詩形」
・・・それらが表面上は単なる音韻的な連鎖として用いられ、悪く言えば単なる言葉の遊戯であるかのごとき観を呈しているにかかわらず、実際の効果においては枕詞の役目が決して地口やパンのそれでないことは多くの日本人の疑わないところである。しかしそれが何ゆえ・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
出典:青空文庫