・・・この場合わが身一つの外に、三界の首枷というもののないことは、誠にこの上もない幸福だと思わなければならない。 ○ わたくしの身にとって妻帯の生活の適しない理由は、二、三に留まらない。今その最も甚しきものを挙ぐれば・・・ 永井荷風 「西瓜」
・・・おっしゃったようにいくらでもある事件でしょうけれども、やっぱりこの事件にはこの人の性格というものが作用しており、それから夫婦関係の、記録なんかでは、とてもわからないいろいろの経緯がからみ、三人の子供が首枷になっているという女の非常に憎悪の気・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・ 大地主とその支配人の首枷の下で、農民は、耕作機が彼等を幸福にする道具ではないことを、本能でかぎつけた。彼等は、それを、支配者が農民の観念の統帥としてあてがって置いた悪魔という文句で表現して、機械を地主へ返却したのであった。 ソヴェ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫