・・・このように考えられた作品の思想は、作品の骨組みである構成において示される。」 こういう部分は実に面白いと思う。そして本当のことが観察されている。作品の構成が、通俗的なストーリイとしてではなく、「大きな世界をその詳細な見取図において取り扱・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・イギリスの公園と云えば世界に有名だけれども、ロンドンの東部の公園では、遊んでいる子供も大人も顔色から言葉つきからその骨組の工合まで、西側の人々と異っているというのは何故だろう。 巴里の凱旋門の下では、夜も昼も無名戦士の墓辺の焔がもやしつ・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・ 私は、小説を書いてゆく地力の骨組みを強くする意味からも、適当な機会に評論風な仕事に於いて自分をもっと鍛煉してゆきたいと希望している。はじめは随筆も入る予定であったので、昼夜随筆という題を思いついたのだが、急に頁の都合で随筆の部分が入ら・・・ 宮本百合子 「序(『昼夜随筆』)」
・・・そのような現実に対する作品の本来は負の骨組みを覆うて、作品の現実性を信じさせる条件としてこの作者は一方で小説の細部の具体性は実に洩れなく書き堅める用意を忘れないため、一層その主題の一ねじりに於て加えられている作者の意識しての手の力は、人生へ・・・ 宮本百合子 「生産文学の問題」
・・・バルザックの全生涯、全芸術の最も大きな骨組みをなす矛盾は、彼が自身の現実生活で満喫した社会悪、階級権力の偽瞞に対し常に熱のつよい憤懣の状態にあり、この社会を人間の生産力、才能その他を活かし得るところとするためには「社会科学を全くつくりかえね・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・窓からは遠く森や丘のつらなった外景と、その上の空が見えていて、風景は骨組の大きい一人物の肖像のバックをなした。深くはげ上ったかたい前頭。熱中して性急に話すにつれて、その主張をききての心の中へ刺しこもうとするように動き出す右の手と人さし指の独・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ はいって来たのは四十歳ばかりの男である。骨組みのたくましい、筋肉が一つびとつ肌の上から数えられるほど、脂肪の少い人で、牙彫の人形のような顔に笑みを湛えて、手に数珠を持っている。我が家を歩くような、慣れた歩きつきをして、親子のひそんでい・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
出典:青空文庫