・・・その風采、高利を借りた覚えがあると、天窓から水を浴びそうなが、思いの外、温厚な柔和な君子で。 店の透いた時は、そこらの小児をつかまえて、「あ、然じゃでの、」などと役人口調で、眼鏡の下に、一杯の皺を寄せて、髯の上を撫で下げ撫で下げ、滑・・・ 泉鏡花 「露肆」
・・・貰ったものだと感謝していたところ、こともあろうに、安二郎はそれを高利で貸したつもりでいたのだ。 豹一は毎朝新聞がはいると、飛びついて就職案内欄を見た。履歴書を十通ばかり書いたが、面会の通知の来たのは一つだけで、それは江戸堀にある三流新聞・・・ 織田作之助 「雨」
・・・な、おまけに高利で貸した血の出るような金で、食い肥った立派な人だ。こんな赤ん坊を引裂こうが、ひねりつぶそうが、叩き殺そうが、そんなこたあ、お前には造作なくできるこった。お前には権力ってものがあるんだ。搾取機関と補助機関があるんだ。お前たちは・・・ 葉山嘉樹 「牢獄の半日」
・・・七分、八分五厘という高利の「農民銀行」を利用する富農の強化などによって、驚くべき勢で農村の階級的分裂が促進されつつあった。ロシアには一千万の労働者と、その二倍の貧農が発生しつつあった。ロマーシとゴーリキイのまわりに親密な感情をもって集ったの・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫