･･･治修はある時二人の鷹匠にそれぞれみずから賞罰を与えた。これは治修の事を処する面目の一端を語っているから、大略を下に抜き書して見よう。「ある時石川郡市川村の青田へ丹頂の鶴群れ下れるよし、御鳥見役より御鷹部屋へ御注進になり、若年寄より直接言･･･ 芥川竜之介 「三右衛門の罪」
･･･ 鳥さしは維新以前には雀を捕えて、幕府の飼養する鷹の脚を暖めさせるために、之を鷹匠の許へ持ち行くことを家の業となしていたのであるが、いつからともなく民間の風聞を探索して歩く「隠密」であるとの噂が専らとなったので、江戸の町人は鳥さしの姿を･･･ 永井荷風 「巷の声」
･･･二人の男は鷹匠衆であった。井の底にくぐり入って死んだのは、忠利が愛していた有明、明石という二羽の鷹であった。そのことがわかったとき、人々の間に、「それではお鷹も殉死したのか」とささやく声が聞えた。それは殿様がお隠れになった当日から一昨日まで･･･ 森鴎外 「阿部一族」
出典：青空文庫
