・・・ スムールイは、麦酒を飲みながらしみじみとゴーリキイに云った。「お前がもう少し大きかったら、いろんなことを教えてやるのだがなあ。俺は人に語るべきものを持っている。俺は馬鹿じゃない。……マア、お前は本を読むこった。本の中には何でも必要・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ジョソン博士が麦酒を飲みながら片手に長煙筒を持ってビール盃を出す料理屋がフリート町にある。その半木造の家で昔ジョンソン自身が現代の新聞社街を支配する資本家を知らずに酔っぱらった。そして気焔を吐いた。 ハイド公園に近いピカデリー通りで貴族・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・ この時すぐに目を射たのは、机の向側に夷麦酒の空箱が竪に据えて本箱にしてあることであった。しかもその箱の半以上を、茶褐色の背革の大きい本三冊が占めていて、跡は小さい本と雑記帳とで填まっている。三冊の大きい本は極新しい。薄暗い箱から、背革・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫