出典:青空文庫
・・・ 父親と商人との話を聞いていたイワンが、弟の方に向いて云った。「いいや!」商人の眼は捷くかがやいた。「糧秣や被服を運ぶんだ。」「糧秣や被服を運ぶのに、なぜそんなに沢山橇がいるんかね。」 イワンが云った。「それゃいるとも。・・・ 黒島伝治 「橇」
・・・ 五 イワン ドブジェンコのこの映画にも前の「大地」と同様な静的な画面をつないで行く手法が目につく。堰堤工事の起重機や汽車の運動は、見ているとめまいを起こすほどであるが、しかしその編集法はやはり静的で動的でない。・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・特に就中、詩人の影響されたことは著るしく、独逸のデエメル、イワン・ゴール、仏蘭西のグウルモン、ジャン・コクトオ、ヴァレリイ等、殆んど近代の詩人にして、ニイチェからの思想的、哲学的影響を受けないものは一人もない。 それほどニイチェは、多く・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・こういうものは、すっかり、ステパン、イワンになり切って、自分達が傍から見て可笑しい何を云っているのも気づかず段々熱中して行くところに、自然な人間的な微笑が現れる筈なのだ。日本の所謂喜劇という概念に励まされて、賑やかに騒いだのでは仕方がない。・・・ 宮本百合子 「印象」
・・・ぺちゃぺちゃやってるのは、ターニャと同じ小学校からやって来たイワンだ。 イワンは技師の息子で、みんなの間に有名な一つの病気をもっている。それは、学生委員会であろうが、昨夜のような集会であろうが自分が鼻をつっこめるだけの場所で、誰か一寸余・・・ 宮本百合子 「ワーニカとターニャ」