出典:青空文庫
・・・彼等はいずれも不幸だった。エリザベス朝の巨人たちさえ、――一代の学者だったベン・ジョンソンさえ彼の足の親指の上に羅馬とカルセエジとの軍勢の戦いを始めるのを眺めたほど神経的疲労に陥っていた。僕はこう云う彼等の不幸に残酷な悪意に充ち満ちた歓びを・・・ 芥川竜之介 「歯車」
・・・英国においてはエリザベス女王のもとにその今や世界に冠たる製造業を起しました。その他、オランダにおいて、ドイツにおいて、多くの有利的事業は彼らによって起されました。旧き宗教を維持せんとするの結果、フランス国が失いし多くのもののなかに、かの国に・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・彼は Clara Elizabeth La Touche Vicars と結婚して、Langford に住んでいた。ここで John William Strutt が生れた。これがすなわち物理学者のレーリー卿である。 レーリーの血筋に科・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・そのうちエリザベスが幽閉中の二王子に逢いに来る場と、二王子を殺した刺客の述懐の場は沙翁の歴史劇リチャード三世のうちにもある。沙翁はクラレンス公爵の塔中で殺さるる場を写すには正筆を用い、王子を絞殺する模様をあらわすには仄筆を使って、刺客の語を・・・ 夏目漱石 「倫敦塔」
・・・勇敢な看護婦・皇后エリザベスは小柄で華奢で、しかも強靭な身ごなしで、歩道によせられた自動車から降り立った。その背たけはすぐわきに立っていた私より、ほんの頭ぐらいしか高くなかった。どこでも、私はその学校ナイズすることが不得手で、大正の初めに苦・・・ 宮本百合子 「女の学校」
・・・で、幸福そうな若夫婦はエリザベス王女とエディンバラ公であった。かわいらしい男の赤ちゃんはチャールズで、夏別荘に暮している一家のスナップなのだった。 エリザベス王女のあらゆる種類の写真が世界にひろがっている。威厳がありすぎるほど威厳にみち・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・ダンテの名もあるとハガキに父は書いているが、神曲の作者は沙翁がエリザベス女皇の劇場で活躍するより数世紀以前に白骨となっている。どこの、どの、神曲を書かさるるこれはダンテであったのだろうか。 書簡註。緑濃き野面に一本・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・また、植民地膨脹期のエリザベス朝の戯曲家シェクスピアが生きた時代のイギリス感情でもある。 オセロの黒檀のようなつややかなきつい人間美。デスデモーナの柔かく白い大理石のような美しさ。その二人の間に、オセロの愛のしるしとして一枚のきれいなハ・・・ 宮本百合子 「デスデモーナのハンカチーフ」
・・・ストレチー「エリザベスとエセックス」など。〔一九四八年一月〕 宮本百合子 「でんきアンケート」
・・・一ヵ月の蜜月のために、田園の大きい館が用意されたのは、イギリスでもエリザベス王女ぐらいのものであろう。結婚しましょうよ、というわかい人々の決心は、すぐつづいて、でも家は? と問題にぶつかる。仕方がないから当分親たちと同居ということになったと・・・ 宮本百合子 「離婚について」