出典:青空文庫
・・・まことにクリスチャンらしき計画ではありませんか。真正の平和主義者はかかる計画に出でなければなりません。 しかしダルガスはただに預言者ではありませんでした。彼は単に夢想家ではありませんでした。工兵士官なる彼は、土木学者でありしと同時に、ま・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・そのくせ帝塚山の本宅にいる細君は女専中退のクリスチャンだった。細君は店へ顔出しするようなことは一度もなく、主人が儲けて持って帰る金を教会や慈善団体に寄附するのを唯一の仕事にしていた。ほんまに大将は可哀相な人だっせと仲居は言うのだったが、主人・・・ 織田作之助 「世相」
・・・蘆花自身人道主義者で、クリスチャンだったが、東郷大将や乃木大将を崇拝していた。「不如帰」には、日清戦争が背景となっている。そして、多くの上級の軍人が描かれている。黄海の海戦の描写もある。しかし、出てくる軍人も戦争の状景も、通俗小説のそれ・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・けれども、少しヘンテコです。クリスチャンでもあり、スティルネリアンでもあるというあわれな男です。どうか御返事を下さい。太宰イズムが、恐ろしい勢で私たちのグルウプにしみ込みました。殆ど喜死しました。さよなら、御返事をお待ちしています。三重県北・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・わしは別に、クリスチャンではないが、しかし日本が聖書の研究もせずに、ただやたらに西洋文明の表面だけを勉強したところに、日本の大敗北の真因があったと思う。自由思想でも何でも、キリストの精神を知らなくては、半分も理解できない。」「十年一日の・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・昔自分達が若かった頃のクリスチャンのように妙に聖者らしい気取りが見えなくて感じのいい人達のようである。 この団体がここを引上げるという前夜のお別れの集りで色々の余興の催しがあったらしい。大広間からは時々賑やかな朗らかな笑声が聞こえていた・・・ 寺田寅彦 「高原」
・・・ 作者が二十六歳位の時分、当時熱烈なクリスチャンであった彼は日記をよくつけているが、その中にこういう箇所がある。「余は去りて榊病院に河野氏を訪ひぬ。恰も Miss Read、孝夫、信子氏あり。三人の帰後余は夫人の為に手紙の代筆な・・・ 宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
・・・パストゥールが、科学の示した真実についてどこまでも譲歩せず屈従せず其の真実性を守ったことから人類への福祉はもたらされたのだし、感動的な美がその物語のうちに生じたのであって、万一あれがクリスチャン・サイエンスの映画であったら、何の美しさや感動・・・ 宮本百合子 「科学の精神を」
・・・という一冊の本は、闇買いをわるいこととして絶対にそれをしないで病死した一人の若い女教師の手記である。クリスチャンということをこの頃強調する片山首相夫人は、営養失調で死んだ判事の事件に対して新聞記者のインタービューに答え「そこは奥様が少しなん・・・ 宮本百合子 「再版について(『私たちの建設』)」
・・・蘆花は当時としては欧州文化を早く吸収したクリスチャン出であったのだけれども、自然を描写する場合になると、漢文脈の熟語、形容詞をつかって、こんにちの読者にはふり仮名なしにはよめない麗句で朝日ののぼる姿を描き、あるいは、余情綿々たる和文調で草木・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」