出典:青空文庫
・・・今、同じ部屋に居る会社の給仕君と床屋に行って来ました。加藤咄堂氏のラジオを聞いてきました。帰りに菓子四十銭、ピジョン一箱で、完全に文無しになりました。今シェストフ『自明の超克』『虚無の創造』を読んでいます。彼は云います、『一般に伝記というも・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ In a word という小題で、世人、シェストフを贋物の一言で言い切り、構光利一を駑馬の二字で片づけ、懐疑説の矛盾をわずか数語でもって指摘し去り、ジッドの小説は二流也と一刀のもとに屠り、日本浪曼派は苦労知らずと蹴って落ちつき、はなは・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・そして、この不安の文学の主唱者たちは、不安をその解決の方向にむかって努力しようとする文学において唱えず、従来人々の耳目に遠かったシェストフなどを引き出して、不安の裡に不安を唱えて低徊することをポーズとしたのであった。 河上徹太郎、小林秀・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・そして、かつて動揺していた時代のアンドレ・ジイドの低迷的な作品や正統なロシア文学史には名の出ていないようなロシア生れの批評家シェストフの虚無的著作を、非常なとりまきでかつぎあげながら持ちこんできた。落付いて観察すると、これはまことに奇妙なや・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」