出典:青空文庫
・・・ 私は年少の頃から劇作家を志し、小説には何の魅力も感じなかったから、殆んど小説を読まなかったが、二十六歳の時スタンダールを読んで、はじめて小説の魅力に憑かれた。しかし「スタンダールやバルザックの文学は結局こしらえものであり、心境小説とし・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
一 スタンダールは彼の墓銘として「生きた、書いた、恋した」 という言葉を選んだということである。 スタンダールについて語る人は、殆んど例外なしに、この言葉を引用している。まことにスタンダールらしい言葉、スタンダールの生涯・・・ 織田作之助 「中毒」
最近「世界文学」からたのまれて、ジュリアン・ソレル論を三十枚書いたが、いくら書いても結論が出て来ない。スタンダールはジュリアンという人物を、明確に割り切っているのだが、しかし、ジュリアンというのはどんな人物かと問えば「赤と・・・ 織田作之助 「文学的饒舌」
・・・ 大学へ行かず本郷でうろうろしていた二十六の時、スタンダールの「赤と黒」を読み、いきなり小説を書きだした。スタイルはスタンダール、川端氏、里見氏、宇野氏、滝井氏から摂取した。その年二つの小説を書いて「海風」に発表したが、二つ目の「雨」と・・・ 織田作之助 「わが文学修業」
・・・プラトンのように寓話的なもの、ショウペンハウエルのように形而上学的なもの、エレン・ケイのような人格主義的なもの、フロイドのように生理・心理学的なもの、スタンダールのように情緒的直観的のもの、コロンタイのように階級的社会主義的のもの、その他幾・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・ova.Goethe : Die Leiden des jungen Werthers.Schopenhauer : Die Welt als Wille und Vorstellung.Stendhal : De l'amou・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・しかし、六月号の批評では、大岡昇平がスタンダール研究者であるという文学的知識に煩わされて、その作者が誰の追随者であろうとも、作品の現実として現代の歴史の中に何を提出しているかという点が、力づよく見きわめられなかった。火野葦平の「悲しき兵隊」・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・ スタンダールは、すっかり読み返してみようとしていたのに病気になってしまいました。たしかに相当の作家です。「ナポレオン伝」などをみても、それを書いた動機がやはり一つの気力で、ナポレオンの没落後、パリの社交界人が、ナポレオンとさえ言わず、・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・同じ頃古典の摂取ということが文壇でやかましく言われ、バルザック、スタンダール、ドストイェフスキー等が読み直され始めた。だがこの古典の摂取も作家の豊富さを増すためにはあまり役に立たなかった。それには理由があった。これらの作家達は既に文芸復興の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・トルストイ、ドストイェフスキー、特にこれまで日本に十分紹介されていなかったバルザック、スタンダール等の作品は流行となって翻訳、出版された。なかでもバルザックは特にもてはやされた。何故ならマルクスがバルザックの作品を評したなかで、バルザックが・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」