出典:青空文庫
・・・近頃は日本人の顔がだんだんに西洋人に似てくるようで、銀座などを歩いているとあちらの映画スターに似たような顔つきをした男女を見かけることも珍しくないがただ髪の毛だけは、当り前のことだが皆申し合せたように真黒である。しかし、日本人の日常生活がだ・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・「ええ、けれど、ごらんなさい、そら、どうです、あの立派な川、ね、あすこはあの夏中、ツインクル、ツインクル、リトル、スター をうたってやすむとき、いつも窓からぼんやり白く見えていたでしょう。あすこですよ。ね、きれいでしょう、あんなに光って・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・だってスターにならなくたってどうせあしたは死ぬんだわ。」「あら、いくらスターでなくってもあなたの位立派ならもうそれだけで沢山だわ。」「うそうそ。とてもつまんない。そりゃあたしいくらかあなたよりあたしの方がいいわねえ。わたしもやっぱり・・・ 宮沢賢治 「ひのきとひなげし」
・・・なるほど、現在有名になっている女優一人一人について見れば、容貌にしろ髪の色、声にしろ感情表現の身振りにしろ特長がなくはないのだが、男との相対において現われて来ると、性格的なものをはっきり生かそうというスター・システムの焦慮にもかかわらず、感・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・また年も若く無智な暁子がその様ないきさつに這入った事には、今日の映画会社の経営方法、スターの製作法、給金は少いのに派出にばかり振舞わなければならない映画会社での無理、その他実に多くの今日の社会の矛盾や、片手落ちが暁子の例の中に集約されていま・・・ 宮本百合子 「「女の一生」と志賀暁子の場合」
・・・あすこは金持の少し才能のある娘を親ぐるみでおだてて、あっちこっちへ留学させ、とどのつまりは学校のスターを作る流儀だから、始めはそれで行って苦労している内に、幾分かそのわくからはみ出たのでしょう。緑郎も三十で相当に色々見聞して、ああいう地味ら・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・その後東宝経営者は、興業資本の利潤追及の方向を強化して、保守的な文化性の低いスター中心に作った第二組合に、安価なエロ・グロ・剣劇映画を作らせ第一組合を無活動におとしいれ数百名のくびきりを行った。 輸入映画が国外の興業資本によって日本の文・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」