出典:青空文庫
・・・着物を重ねても寒い秋寒に講壇には真裸なレオというフランシスの伴侶が立っていた。男も女もこの奇異な裸形に奇異な場所で出遇って笑いくずれぬものはなかった。卑しい身分の女などはあからさまに卑猥な言葉をその若い道士に投げつけた。道士は凡ての反感に打・・・ 有島武郎 「クララの出家」
・・・また、レオ・シロタは、「ハイフェッツにしても、この年でこの位弾けたかどうか疑問だ」 と無茶苦茶なほめ方だった。 ローゼンシュトックは、「あの子は悪魔の子だ」 と、呟いた。 相手が十三歳の子供だというので、ほめる方でも・・・ 織田作之助 「道なき道」
・・・、ソヴェトのレオニード・レオーノフの「スクタレフスキー教授」などは、科学者の学問的情熱と社会の歴史的環境を扱っていましたが、素人眼にも科学者は成功的でありませんでした。レマルクの「凱旋門」の主人公の外科医ぶりは、外科の医者からみると、ところ・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・だが十七世紀の法王庁はこの真理を語ったかどでガリレオ・ガリレーを重罪に問うた。ガリレーは以後そのことについては語らないと裁判で答えたが、彼はひそやかにつぶやいた、「しかしそれは動く」と。そしてそれはそのとおりなのだ。徒らに言論を抑圧するとい・・・ 宮本百合子 「地球はまわる」
・・・ 世界で一番きたない本はバイブルである、という意味のニーチェの言葉が警句というより深い意味をもっているとすれば、それはガリレオ・ガリレーの生涯やホーソンの「緋文字」を見てもわかるとおり、どっさりの人類の叡智や生命や愛が、その一冊の分厚い・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」