出典:青空文庫
・・・―― ――椰子の花や竹の中に 仏陀はとうに眠っている。 路ばたに枯れた無花果といっしょに 基督ももう死んだらしい。 しかし我々は休まなければならぬ たとい芝居の背景の前にも。 ・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・「仏陀の運命も同様です。が、こんな事を一々御話しするのは、御退屈を増すだけかも知れません。ただ気をつけて頂きたいのは、本地垂跡の教の事です。あの教はこの国の土人に、大日おおひるめむちは大日如来と同じものだと思わせました。これは大日貴の勝・・・ 芥川竜之介 「神神の微笑」
・・・ 仏陀 悉達多は王城を忍び出た後六年の間苦行した。六年の間苦行した所以は勿論王城の生活の豪奢を極めていた祟りであろう。その証拠にはナザレの大工の子は、四十日の断食しかしなかったようである。 又 悉達多・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・ 既成の諸宗の誤謬は仏陀の方便の権教を、真実教と間違えたところにある。仏陀の真実教は法華経のほかには無い。仏陀出世の本懐は法華経を説くにあった。「無量義経」によれば、「四十余ニハ未だ真実ヲ顕ハサズ」とある。この仏陀の金言を無視するは許さ・・・ 倉田百三 「学生と先哲」