出典:青空文庫
・・・韓退之所謂務去陳言戞々乎其難哉とは正に此謂いなり、若し古人の意を襲して即ち古人の田地の種獲せば是れ剽盗のみ。李白杜甫韓柳の徒何ぞ曽て古今を襲わん。独り漢文学然るに非ず。英のシエクスピールやミルトンや仏のパスカルやコルネイユや皆別に機軸を出さ・・・ 幸徳秋水 「文士としての兆民先生」
・・・例えば李白の詩を見ても、一つの長詩の中に七言が続く中に五言が交じり、どうかすると、六言八言九言の交じることもある。四言詩の中に五言六言の句の混入することもあるのである。 中央アジア東トルキスタン辺の歌謡を見ると勿論色々な型式があるが、中・・・ 寺田寅彦 「短歌の詩形」
・・・芭蕉のごとく消極的な俳句を造るものでも李白のような放縦な詩を詠ずるものでもけっして閑人ではありません。普通の大臣豪族よりも、有意義な生活を送って、皆それぞれに人生の大目的に貢献しております。 理想とは何でもない。いかにして生存するがもっ・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・ 李白が「万戸砧をうつ声」と詩にうたったその日夜の砧は、宋国のどんな男がうっただろう。それはみんな婦人たちのうつ砧の音であって、数千年の間、人類の女性は、誰がために、何を、どういう事情のもとに紡ぎ、織り、染め、そして縫って来たのだろう。・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・隴西の李白、襄陽の杜甫が出て、天下の能事を尽した後に太原の白居易が踵いで起って、古今の人情を曲尽し、長恨歌や琵琶行は戸ごとに誦んぜられた。白居易の亡くなった宣宗の大中元年に、玄機はまだ五歳の女児であったが、ひどく怜悧で、白居易は勿論、それと・・・ 森鴎外 「魚玄機」