せい‐どう【青銅】例文一覧 14件

  1. ・・・――低い舷の外はすぐに緑色のなめらかな水で、青銅のような鈍い光のある、幅の広い川面は、遠い新大橋にさえぎられるまで、ただ一目に見渡される。両岸の家々はもう、たそがれの鼠色に統一されて、その所々には障子にうつるともしびの光さえ黄色く靄の中に浮・・・<芥川竜之介「大川の水」青空文庫>
  2. ・・・そのほか象牙の箸とか、青銅の火箸とか云う先の尖った物を見ても、やはり不安になって来る。しまいには、畳の縁の交叉した角や、天井の四隅までが、丁度刃物を見つめている時のような切ない神経の緊張を、感じさせるようになった。 修理は、止むを得ず、・・・<芥川竜之介「忠義」青空文庫>
  3. ・・・ことにその橋の二、三が古日本の版画家によって、しばしばその構図に利用せられた青銅の擬宝珠をもって主要なる装飾としていた一事は自分をしていよいよ深くこれらの橋梁を愛せしめた。松江へ着いた日の薄暮雨にぬれて光る大橋の擬宝珠を、灰色を帯びた緑の水・・・<芥川竜之介「松江印象記」青空文庫>
  4. ・・・そして仏蘭西から輸入されたと思われる精巧な頸飾りを、美しい金象眼のしてある青銅の箱から取出して、クララの頸に巻こうとした。上品で端麗な若い青年の肉体が近寄るに従って、クララは甘い苦痛を胸に感じた。青年が近寄るなと思うとクララはもう上気して軽・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  5. ・・・たいへんやさしい王子であったのが、まだ年のわかいうちに病気でなくなられたので、王様と皇后がたいそう悲しまれて青銅の上に金の延べ板をかぶせてその立像を造り記念のために町の目ぬきの所にそれをお立てになったのでした。 燕はこのわかいりりしい王・・・<有島武郎「燕と王子」青空文庫>
  6. ・・・古色の夥しい青銅の竜が蟠って、井桁に蓋をしておりまして、金網を張り、みだりに近づいてはなりませぬが、霊沢金水と申して、これがためにこの市の名が起りましたと申します。これが奥の院と申す事で、ええ、貴方様が御意の浦安神社は、その前殿と申す事でご・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  7. ・・・矢張、江戸風な橋の欄干の上に青銅の擬宝珠があり、古い魚河岸があり、桟橋があり、近くに鰹節問屋、蒲鉾屋などが軒を並べていて、九月はじめのことであって見れば秋鯖なぞをかついだ肴屋がそのごちゃごちゃとした町中を往ったり来たりしているようなところで・・・<島崎藤村「食堂」青空文庫>
  8. ・・・ふと或る店の飾り窓に、銀の十字架の在るのを見つけて、その店へはいり、銀の十字架ではなく、店の棚の青銅の指輪を一箇、買い求めた。その夜、私のふところには、雑誌社からもらったばかりのお金が少しあったのである。その青銅の指輪には、黄色い石で水仙の・・・<太宰治「秋風記」青空文庫>
  9. ・・・大正十二年の震災のときは、橋のらんかんに飾られてある青銅の竜の翼が、焔に包まれてまっかに焼けた。 私の幼時に愛した木版の東海道五十三次道中双六では、ここが振りだしになっていて、幾人ものやっこのそれぞれ長い槍を持ってこの橋のうえを歩いてい・・・<太宰治「葉」青空文庫>
  10. ・・・世界で一番いい妻になって、一番いい母になって、そして石や青銅で美しい像をつくって、世界の果まで旅行して、ああ私はありとあらゆることがしてみたいという溢れるような彼女の性格は、その土台が真摯な、ひたむきな素朴さ、純粋さにおかれていて、どことな・・・<宮本百合子「『この心の誇り』」青空文庫>
  11. ・・・けれども、一人一人の成長と発展の過程には、丹念に青春の青銅時代がもたらされている。そしてそのういういしく漲るエネルギーによって人間生活のありかたが改めて知覚され、探究され必ず何かの新しい可能もそこに芽生えていて、社会のうちに行為されてゆく。・・・<宮本百合子「小さい婦人たちの発言について」青空文庫>
  12. ・・・長椅子からよっぽどはなれた所に青銅製の思い切って背の高いそして棒の様な台の上に杯の様な油皿のついた燈火を置いて魚油を用うるので細い燈心から立つ黄色い焔の消えそうなほどチラチラする事が多くうすい油烟が絶えず立つ。すべてよっぽど更けた夜の様・・・<宮本百合子「胚胎(二幕四場)」青空文庫>
  13. 青銅の扉に秘密を閉してもだせる夜の厳さよ!万物はかたずのみて闇に立ち迷う奇蹟をながめ故知らぬ暗示に胸をとどろかす偉なるかな!奇なるかな!生あるものは総てかく低唱しつつ厚き帳のかなた身じろぐ夜の・・・<宮本百合子「夜」青空文庫>
  14. ・・・ ロダンの「青銅時代」が表現しているように。 肉体が性にめざめるとき、時期をひとしくして人間の精神に自我が覚醒し、開花して来るというヒューマニティーの過程にこそ、思えば感動をおさえがたい人間の光栄がある。美しい十代は、小さい男性、小・・・<宮本百合子「若い人たちの意志」青空文庫>